小さな執行人ボツ集3
シルヴァンが見た夢の話をどこかに入れようと思っていた。
しかし執筆中に不要なシーンではないかと思ったためボツ。
─────────────────────────────────
①
目が覚めた時、内容を反芻できるほど鮮明に覚えていた。
父と私は二人で庭に出ていた。その時はとてもいい天気で太陽の光が眩しかった。
父は明るい声で私の名を呼んだ。私は振り返り、父の元へ走っていく。
何やら見せたいものがあったようで、地面に咲いている草を指差した。
「四つ葉のクローバーがあったよ」
それは小さくもしっかりと四枚の葉をつけている。父がそっと摘んで手渡してくれた。
「わあ…四つ葉のクローバー! 初めて見た!」
私は小さな小さな喜びをすぐそこに見つけた。子供ながらこれが自分の幸せなのだと感じた。
「シルヴァン…君の喜びや幸せは、パパの幸せでもあるからね」
そう言って微笑みを浮かべる。
「だからもし君がこの先辛い思いをした時は、パパも一緒に乗り越えるからね」
私は「うん」とだけ答え、四つ葉のクローバーを見つめていた。
そこで夢物語は途切れてしまったのだが、現在でもこの夢をしっかりと覚えている。違う、忘れることができない。夢の中で父が言った台詞は私の運命を暗示していたのだと思う。
この幸せな夢を見た後、私は気持ちが落ち着いていた。涙はもう出てこなかった。そして、もしかしたら自分は父にひどいことを言ってしまったのではないかと急に不安になってきたのである。
─────────────────────────────────
②
初めて公開処刑を見た後は何度もその場面が頭の中に蘇り私を散々苦しめた。
ある時はそれが悪夢となって私に襲いかかった。暗闇に包まれた処刑台の上に立ち、どこからか死神の声が反響する。お前もこの手で首を刎ねてみろ─。この夢は、決して逃れられない運命なのだということを暗示していたに違いない。
父が処刑台の上に君臨する姿を見て、あれは将来の私の姿でもあるのかと考えたら途端に怖くなったのを覚えている。
そしていつしか「処刑人にはなりたくない」という思いが渦巻くようになる。
powered by 小説執筆ツール「notes」
88 回読まれています