2023/10/11 ゆかり大根

※この世界は100年単位で未来のイメージ


 かつらむき、と言うものがある。大根を薄く皮をむくようにするもので、料理のプロだと透き通るほど薄く剥けるとかなんとか。もっとも最近だと大体機械で薄さも自由自在らしいのだが。あとご家庭で使う分程度はピューラーでやった方が早い。
 それはそれとして、ふと、このゲームの|DEX《きようさ》なら可能なのでは? と、思ったわけだ。あれだけ食にこだわりのある運営が用意していないわけがないという、信頼もあったしな。

「うーむ、なかなかに難しい奴だな」

 練習を初めて一時間ほど。薄さは満足ができるぐらいにはなったのだが、長さが……途中で切れる。あとスピードもなぁ。理想はスルスルスルスル~って感じで最後まで、だ。

「だめだ、集中力が切れた」

 連続してぷつんぷつんと切れたところでギブアップ。ちょっと気分転換をしよう。あと、大量にできた大根の薄いのをどうしようか。千切りにして刺し身の|つま《・・》にするぐらいしか知らんな。いやさすがにこれ全部をそうするわけにもいかんだろう。
 ……ひとまずポーチに入れておこう。ありがとう時間停止。



「なるほど、それでこれでしか」
「そう」

 ポリポリと菊姫が食べているのは私が大量に作ってしまった桂むきした大根を加工したものだ。赤ジソのふりかけで揉んだ後、出た水分を捨てる。そのままだと味がとんがっているのでマヨネーズで和えてまろやかに。

「赤じそなんてよくあったね」
「扶桑で回収してきた」

 こちらはお茶請けにしているお茶漬が言うので探してきたと返す。梅干しもできるぞ。と言えば、焼酎に入れる。とのこと。すべてが酒につながる。梅干しは手間暇がかかるが、『時間促進』や天気が一定の『庭』ならばさほど困らんだろう。

「肉が食いてぇ」
「試食のつもりだったんだが、それならこれも」
「なんでしか、これ」

 ぼやくシンに別のものを出す。大根の使い道を調べているついでに見つけたレシピだ。ドライマンゴーに生ハムを巻いたものだ。生ハムメロンの変わり種、か?

「ん、ムチムチした甘さと生ハムの塩気がいい感じでし」
「けど、生ハムはそのまま食いてぇ」

 菊姫には反応がよかったが、生粋の肉好きのシンには物足りなかった模様。

「はいはい、わかったわかった。それじゃ食事にしよう」

 どちらに試食だ。大根の大部分を使ったサラダを中心に、分厚い肉も出す。途端にシンが歓声を上げる。えぇい、野菜を食え! 今日のメインはそれだぞ!

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