秋
「今どき赤いジャージて……。」
「赤、ええやんか! 目立つし格好ええし、お前こそ、この緑のジャージに何とも思ってへんのかいな。イモジャージやんか。」
「僕のは借りたモンなんで。」
三日坊主になるに決まっているが、運動不足の気のある兄弟子が、この頃のたるんだ腹を引っ込めるのにランニングをしたいと言い出した。
そんな訳で急遽、草原兄さんところの草太が高校の時に着ていたおさがりを、若狭経由で譲って貰ったのである。緑姉さんは若狭が着ると思っている可能性があるのか、腰の辺りが若干緩いまま、裾は詰まっている。とはいえ、タダで譲られた服にダサいだのなんだのと、こちらが文句を付ける筋合いもない。
しかしまあ……。オレンジ色ならまだしも、赤。
確かに兄弟子がボヤいている通り、真ん中に配置されがちな子どものジャージが黄色であれば、三人並んで信号機である。
運動の秋、読書の秋、食欲の秋と気温が下がれば色々あるが、金を掛けずに楽しむと言うことを知らない兄弟子だった。
「一応聞きますけど、」
「おチビの分やろ、本人は黒がええて言うてたけど、一応白にしといたわ。何や?」
「……。」
学校の運動着あんのに結局買うたんですか、とこちらが口にしたが最後、言い訳が長い。
まあ、食欲の秋の方は諦めて、月末まで毎日うどん食べてたらええか。
スーパーで買うてきた安い油揚げを上手いこと煮付けるやり方、そろそろ子どもにも教えたらなアカンな。
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