口説き方

月がきれいですね、と譲介がいうと、TETSUは決まって、もっと他に口説きようがあるだろうと笑う。
高校時代の僕にシェイクスピアを読ませたのは彼だというのに、旧い言葉は芝居の中だけの話でいいんだよ、と笑って、その話題はもういい、とばかりに手を振った。
じゃあ、あなたはどんな風に口説かれたいですか、と尋ねると、まだるっこしいことは苦手だという年上の人は、僕の上に屈み込み、こちらの目を見つめた。
もう言葉は貰ってる。
そう言って、満月のような笑みを浮かべると、恋人はそっと僕の唇にキスをした。

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