白夜

夏場、この国の太陽は沈まない。
明るい夜の中で、寝室にも沈まない日の明るさが差し込んでいる。
ラクは繰り返し見る夢を思い返す。

真っ白な雪原を自分は息を切らして走っている。逃げているのだ。何かから。
自分の背後、遠くから銃声が聞こえる。
パーーーーン……と響く乾いた銃声。それは猟銃の発砲音に違いなかった。
自分は追われる獣だ。隠れることのできない平原をひた走る獣。
吐き出す息は、冷たい空気の中に白く可視化されてはあっけなく消えていく。
あとどれだけ走るのだろうと思った瞬間、衝撃が全身を襲った。雪の中へ倒れ込む。
撃たれたのだ。ああ、と思って目を閉じた。

次に目を開けたときには、視点が切り替わっていた。
自分は雪の上には倒れておらず、代わりに目の前に倒れているの雌鹿だった。白い雪の上に血を流して倒れている。そしてその横には猟銃を手にした男(それは間違いなくチョ・ウォノだ)が立っていた。
追っ手の男は仕留めた獲物を検分し、手際よく裁いていく。その様子を自分はずっと見ている。
自分であった/ある雌鹿が解体されていく、そのさまを。

繰り返し見る夢を反芻するのにはもう慣れた。寝ればこの夢を見る。眠らなくてもこの夢を思い出す。どっちにしろ同じことだ。
眠れない時に、と処方された睡眠薬を飲むべきだったかもしれないと思ったが、その後で、今更だろうと思った。夜がないというなら別にいつ寝てもいい。そう思いながら、次の眠りを待った。
あの夢は、いつもすぐそばにある。

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