20240324　ワンドロ　ファンタジーな学生（服）姿

　人類の夢。その一つは空を飛ぶことだ。そしてこの世界ではそれをかなえることができる。
　が、夢というのならばやはりロマンが必要なわけで、ここに一人。そのロマンに挑戦した男がいた。

「空飛ぶホウキを作ったんだけどさぁ。いまいち」

　ちなみに【空魔法】の『浮遊』をかけているので、飛ぶと言っても地上から五センチぐらいのまさしく「浮く」である。
　ただ、これだけでもできるまで結構な試行錯誤があったことは確かだ。主にアイテムの選別はお茶漬けがやったので、私はひたすら『浮遊』をかけるだけだったが。

「まだ空飛ぶ絨毯の方がいいと思うでしよ？」

　移動には使えなくてもリラクゼーションアイテムにはなりそう。と、菊姫が言う。

「それも考えたんだけど、まずはホウキって、むきになっちゃって」

　絨毯だとまた素材から選別だし、下手すれば糸か毛から絨毯を作らねばならないだろうしな。ホウキならひとまず棒だけでOKだったんですよ。

「浮かぶ高さもあれだけど、さ」

　お茶漬けはそう言って背後を振り返った。そこで、私たちも背後で先ほどから騒いでいる二垢へとようやく視線を向けたのだった。

「あだだだ、おまたが裂けちゃう！」
「わはははは、どわっ！」

　ホウキにまたがり叫ぶシン。ホウキの上に二本足で乗ろうとして落ちるレオ。いやぁ、カオスですね。――通常営業です。

「高さも問題なんだけど、シンの言う通り普通に痛い」
「かといってレオみたいに乗るには……レオのＤＥＸでこれなら菊姫とか乗れないだろう」
「でしねぇ」

　菊姫は生産もやっているのでそう低いわけではないのだが、それでもシーフ職のレオに比べれば低いからな。

「そのうちスキルが生えてきたりして」
「たしかに、レオ、ちょっと戦闘いってきてよ」

　ペテロの言葉にお茶漬が続ける。やだなぁ。【運転（ホウキ）】とか出てきたら。いや、【乗馬】ならぬ【乗ホウキ】か？

「とりあえず、食事にしないか？」

　いろいろ付与しまくったせいかＥＰがやばい。と、私が言えば、「そうだね」とばかりに全員でテーブルにつく。本日は新タマネギとベーコンの和風炊き込みごはん。付け合わせはささみとキュウリのゴマダレサラダだ。シンとレオはこれだけだと物足りないだろうから、別に生姜焼きを提供。

「ベーコンうめぇ」
「ささみの方にもベーコンの味がするね？」

　カッカッカッと、飯をかっこむシン。ペテロが首をかしげる。さすが、鋭いな。ささみはご飯を炊くときに一緒に入れて火を入れたから味が、というか香りが移ったんだろう。

「これいいね。リアルで作ってみようかなぁ」
「炊飯器ぐらいしか使わんからいいかもな」

　あとでレシピ送る。と、お茶漬に言う。この中でそこそこ自炊をしているのは私を含め、お茶漬、菊姫だ。ペテロは実家住み、シンはあまりしないそうで、レオは、うん、レオだしな。

「でもさぁ、棒に付与できるってことは、運営的には空飛ぶホウキはアリなんだと思うんだよね」

　サラダは気に入ったらしい。食べるスピードがやや早いペテロがそういう。やはり話題は先ほどのホウキになる。

「たしかに、私が使える【空魔法】のレベルが低いからな。もっと高くなれば上空に上がるものが出てきそうだ」
「うーん、それじゃ、それ待ちかぁ」

　ペテロと私の言葉にお茶漬は茶碗を手にため息をつきつつ言う。なんだかんだ言ってや、やはりロマンなんですよね。空飛ぶホウキ。

「おかわり！」
「はいはい」

　レオが付きだす茶碗にお代わりをよそってやる。たくさんお食べ。野菜も食べろ。

「アイルあたりにはもうありそうな気もするけど」
「国宝とかになっていたりして」

　アラビアンな国があったら空飛ぶ絨毯がありそうでし。なんて話をするとある平和なひと時の話だった。
　ちなみにこのあとにレオが戦闘をしてきたのだが、スキルは生えてこなかったそうだ。

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お題：ファンタジーな学生（服）姿
制服は……？　かろうじて学園があるアイルの名前は出せた！