2023/12/02 28.キャラメル&ラム
アドベントカレンダー、と言うものがある。十二月一日からクリスマス当日までの二十四日の間、一つずつ開けていくタイプのカレンダーだ。
最近では各種業界から出ていて、選ぶのもなかなか楽しいものです。雑貨屋でも作らないの? と、お茶漬と菊姫に言われて考えたんだが、ゲームとリアルの時間のずれについては、リアルに合わせるようにしました。なんでこれはプレイヤー専用販売。住人には三日に一度開けるものと言うよくわからんものになってしまうからな。
「それでも……」
「なぜ異邦人だけなんですか」
「わかった。カルたちには『世界樹の祝日』に向けて作ろう」
カルとレーノだけではなく、他の面々にもじと~~と見つめられ、私はそう言うしかなかった。
内容は別に大したものではない。一人用なので、クッキーをはじめとした焼き菓子をメインに、最近気に入っている茶葉をティーバックにしたもの、ちょっとお高いものとしては『帰還石』や『生命活性剤』といった消耗品だ。
一応、アドベンドカレンダーはお値段以上のお得感があるようにしてみました。
あと、二十四日の『世界樹の祝日』が開始される日には『アップルソーダ』と今月のプリンの優先購入券が入っている。『世界樹の祝日』は炭酸を飲む日だからな。去年は『スパークリングアップル』の作成だったが、今年は何だろうか。グレープとか?
購入券については今から大量に作る分には問題ないし、【ストレージ】に入れておけば在庫は問題ない。余ったらカルとレーノが食べるだろうというざっくりとした計画なんだが、まぁ最初なのでやってみないとわからんよな。
「いっそレンガードのブロマイドでも入れたら?」
「誰が欲しがるんだ、誰が」
ペテロのふざけたような提案にあきれたように返す。仮面男のブロマイドなんてもらったってしょうがないだろう。私も見世物になるつもりはない。
とはいえ、全部消え物と言うのもなぁ。と、思ったので、光属性+1の効果があるビー玉を一つ。おかげでちょっと値段が上がってしまったのでどれだけうれるかわからん。まぁ、余ったら終わった後に皆で箱を開けながら食べよう。なんて話をしていたんだが――。
「主、アドベントカレンダー、本日分は売り切れました。明日分まで出しますか?」
「嘘だろ?!」
昼過ぎ、カルがそう言ってきた。ちなみに本日限定販売にしようかと思ったら、「暴動が起きる」と多方面からストップがかかったので、基本的にはリアルの24日まで売ることになっています。ただし、売り切れごめん。売り切れごめんなんだが、さすがに初日の午前中で一日分が売り切るのは想定してなかった。
一つ五万シルだぞ!? 『帰還石』が入っているとは、今となっては暴利もいい所なんだが?! いや、手間はかかっているが、それでもスキルを使えばそこまで――いや考えるのはやめよう。
とりあえず初日ぐらいは売り切れないようにしようと、明日分を回してもらう。私は明日以降の分を追加作成しよう。箱、箱が足りない。
「ガラハド、すまん。ちょっと行って箱に使う木材取ってきてもらえないか?」
「おう、任せとけ!」
「ホムラ、他に足りないものはあるか?」
「あとは、布もちょっと心ともないな」
「それじゃ私とカミラはそちらへ行こう」
「すまない!」
「私は何かできることはありますか?」
「レーノは|珪砂《けいしゃ》を頼む」
「わかりました」
あぁぁぁ、まさかこんなに準備不足になるなんて。完全に私の目論見が外れた。いや、いいことなのかもしれないが。面々にも協力して翌日分もなんとか確保する。
「……疲れた」
「お疲れ様です」
「あぁ、カルも座ってくれ」
ひとまず本日の営業は無事に終わりました。ちょっと三人待疲れているようだ。私の両脇に座る二人の頭を撫でる。
カルが差し出す紅茶はほのかにカラメルとラムの甘いが疲れに染みる。ついでに茶菓子を出そう。ガラハド達が返ってきたら改めて肉と酒を出すとして、まずはカルとラピスとノエルの三人だけなのでケーキを出す。
今日のおやつはケークオフリュイと言うクリスマス用の色鮮やかなケーキだ。ドライフルーツのスパイス漬けをたくさん入れたもので、クグロフ型で焼き上げた後に上に|ドレンチェリー《サクランボの砂糖漬け》や|アンゼリカ《フキの砂糖まぶし》をのせ、粉砂糖で白く飾り付けてある。
「カレンダーにも入ってるんだがな」
ちなみにレーノとカルはほぼ甘いものだけだが、ガラハド達のは酒の肴やワインやブランデーのミニボトルが入っていたりする。ラピスとノエルは手袋や冬服や、キレイな布や属性石など装備や生産に使えそうなものも入れてあるぞ。
なので全員カードで渡し、その日に保存場所に取りに行ってもらう形です。
「当日が楽しみですね」
「あぁ」
とりあえず明日からはその日の分が売り切れごめんで、後はなくなるまでだな。当日は運営のイベントに走り回っていると思います。
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