How many times did you kiss?
アイカツスターズ きらあこss。2018年のキスの日に書いたやつ。
きらあこ学園卒業後半同棲前提の日常的KISS♡です。きらあこ軽率にKISS♡してくれ……(祈り)
※芸カ15で頒布したミニssカード掲載のss再掲です
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リビングに続く扉を開ければ、入ってすぐのところに“それ”が蹲っていた。
「ちょっと、またこんなところで力尽きてますの?まったく、仕方ありませんわね」
部屋の明かりを点けると、思ったとおり、ピンクと水色の髪の人物が転がっている。
コートを着たままで気絶するように眠っている彼女の襟首をぐいっと掴んだ。
「ちょっときらら?こんなところで寝ていると、風邪をひきますわよ!」
その身体を数度揺さぶって、ようやく彼女が目を開けた。
「あ、あこちゃん、おかえり~」
「おかえり~、じゃありませんわよ、まったく!」
ここはあこの自宅だ。
学園卒業後、事務所が用意してくれたマンションの一室。あこの城。
しかし頻繁にきららがやってくるせいで、最近では一人暮らしという感覚がどうにも薄れてしまっている。
やっぱり合鍵は渡さない方が良かったかしら、なんて思いながらため息をついた。
そんなあことは対照的に、きららはまだ半分寝ぼけながらも、嬉しそうに微笑んであこを見つめている。
そして、もう一度言った。
「ねぇ、あこちゃん、お・か・え・り♡」
最初に言ったよりも、甘く、ねだるようにあこを見て。
「え?……ああ、はいはい、ただいま、ですわ」
言われてあこも求められていることに気付いて、それをする。自分の唇で、きららのそれに軽く触れること。
つまりは『ただいまのキス』だ。
「あ、そうだあこちゃん、映画のクランクアップ今日だっけ?お疲れさまっ」
「ええ。あなたもロケの帰りでしょう?お疲れさまでしたわね」
今度は言われるまでもなくあこからきららに唇を寄せる。
これは『お疲れ様のキス』。
それから一緒にお風呂に入った後、きららの髪を乾かしてばっちりヘアケアしてやると、きららがくれる『ありがとうのキス』。
日付が変わるころには二人でベッドに入って、少しばかり長い間『おやすみのキス』交わした。
こうして、今日という日が終わっていく。
「よくよく考えてみれば、キス、しすぎ、ですわよね……?」
眠りにつくまでの暫しの間、微睡の中であこはふとそう呟いた。
今日帰ってきてからの短い時間だけでも何回したのかさえ、既に分からない。
思えば初めてきららと唇を重ねてからというもの、何かにかこつけてキスを繰り返ししているうちに、今ではそれ自体が、なんとも自然で当たり前の日常行為になってしまった。
こんなこと、昔の自分では考えられないことだっただろう。
王子様との素敵なキスにずっと憧れていたあの頃。キスとは恋人同士の特別な行為で、特別な時にする、ロマンチックなものだと思っていた。
昔の自分が今のこんな姿を見たら、卒倒してしまうかもしれない。
「まったく、あなたのせいですわよっ……」
そう毒づくけれど、目の前の子羊はもう既にぐっすりと眠りに落ちていて、さっき触れた唇からはすやすやという寝息が聞こえてくるだけだ。
あこはまったく、と呆れたように言葉ををこぼす。
でも。
軽くキスしてしまうなんてはしたないとか、こんなの駄目だとか、そんな風にはこれっぽっちも思わない。
交わす口付けはいつも何気なくて、その一回一回に大きな意味や、素敵なシチュエーションなんてないけれど。
愛するひとのぬくもりをいつだって感じることができる、
それがどんなに素敵で幸せなことだか、もう知っているから。
明日もきっと、目が覚めたら、『おはようのキス』。
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