2023/10/11 とうふ三種
たまにホムラは作る料理に縛りを設けることがある。マンネリ防止なのか、たんなる気まぐれなのか。……両方かな。
「今日のつまみは豆腐三種だぞ」
私の『庭』での食事。ちょうど二人でクエストを終えたところだった。酒は飲むのかと聞かれたので少しだけと答えると、つまみとして豆腐が出された。今日は豆腐縛りらしい。上に乗せられたものがそれぞれ違うようだ。
「トマトとツナ。しらすとバジル。ピーマンと塩辛」
「どれも美味しそう」
赤、白、緑と、目にも楽しい。さっそく箸を手に取る。一口食べて、あれやこれやと感想を言う。ふんふんとうなずきながらホムラも同じものを食べつつ――ただしこちらは私が淹れた緑茶だが――頷くホムラは嬉しそうだ。
別に私は口が肥えているわけでもない。ただ食のストライクゾーンが狭いだけだ。でも、今でも十分美味しいこれが、次はもっと私の口に合うようになるんだろうな。と言う確信があるのが少しだけこそばゆい。
トマトはニンニクの香りがふわりと香り、しらすとバジルは胡麻油と混ぜてあるからか、淡泊な味わいが引き締まっている。ピーマンと塩辛はまさに大人の味だね。
「塩辛のはシンは駄目そう」
「あぁ、確かに。逆にお茶漬は好きだろうな」
「ごはんにも合いそうだよね」
「あいますね」
すでに白米を手にしているホムラ。扶桑には米のために行ったと豪語するだけのことはある。それで国一つを救ってしまったんだから、だいぶ意味が分からないね。
うまうまと幸せそうにしているホムラを見ると、それでいいような気もしてくるけど。
「ペテロ?」
「いやなんでもないよ。酒はこの辺でいいから、私にもごはん頂戴」
「わかった」
差し出される茶碗と、増えるおかず。クリアしたばかりのクエストの感想戦をしながら次はどうするかを決めようか。
そう思ったけど、レオからクランチャットが入ったので次の行動が決まった。どうやらまた面白いクエストを見つけたらしい。
「今度はどんなトンチキなのを見つけたんだ」
「レオは、ホムラとはまた別のへんなものを見つけてくるからね」
「遺憾の意」
一緒にしないでほしいと思いつつ、否定しきれないことは自覚しているらしいホムラの言葉を聞きつつ、残った白米を口に放り込んだ。
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