22.茉莉春毫
「いい香りだわん」
白く、華奢な指が鮮やかな絵付けをされた中国風茶器の淵を掴んでいる。本日はエリアスの店の三階でお茶をしています。前回は烏龍茶を頂いたので、本日は私が用意したジャスミンティです。【鑑定】のテキスト曰く、春風のような爽やかな香りとのことだ。
ジャスミンは緑茶をベースにしたものと、烏龍茶をベースにしたものがあるそうだが、私が作ったのは扶桑茶をベースにしたものだ。ジャスミンの花はバロンとの国境沿い、ジーアス寄りのところで採取してきましたよ。
そして本日は二人だけではなく、ギルとクルルがいます。
「おいしいにゃ~」
「えぇ、このごまだんごも美味しいわ」
どうやらログイン時間合わせの空き時間にエリアスのところに顔を出したところだったらしい。
「武器の修理も多少できるのよ」
パチンと、エリアスがウィンクを返した。ついでに軽く装備のメンテナンスもあったようだ。それからは三人で軽く情報交換。
烈火の方はやはり今も迷宮メインでやっているようだ。ひとまずアイルの戦勝パーティには出るそうなんだが、そのあともすぐにエルフの大陸に行くかどうか検討中とか。ロイ達には負けたくないが、メインクエストにそこまで興味がないというのもあるんだろう。
「行きたい気持ちはあるんでしょうけど、ね」
「レンガード様との実力差を実感してまだ早いのではないかって言ってたにゃ」
ぶっ。
意味ありげな笑みを浮かべたギルに、クルルがぶち込んできます。そのままギルには孫悟空について軽くなじられました。シンが身外身でもてこずったと聞いて気になったようだ。
いや、依頼したのはお茶漬なんだが……すまんです。出現条件はいまいち確信できないこともあって教えてないのでなんというか、いや、頑張ってほしい。
「実際、掲示板でも全体的に開放が早いのではないかっていう話はでてるわねん」
「えぇ、他のサーバの話もあって、全体的なレベルが足りないで帝国の決戦が始まったっていう、ね」
「実際、ほとんどのプレイヤーが最終フェーズに参加できなかったにゃ。参加できても歯が立たなかったにゃ~」
にっこりとそれぞれ温度の違い笑みが私に向けられ、思わず視線がさ迷った。お茶漬やペテロにも言われたが、どうも私の存在とカルの存在のせいでだいぶクエストが前倒しされたっぽいんですよ。あと、パンツ女神の水が決定打っぽい?
無駄だと思ったファルの召喚がなかったら帝国の騎士が全滅しかけたと聞いて冷や汗が止まりませんでしたよ。そんなわけで、まだ新大陸に行ってもレベルが足りないのでは? というのは話が出ているそうだ。
「なるほどなぁ」
まぁ私やうちのクランメンツはそれでも行くんですが。死に戻り上等です。
powered by 小説執筆ツール「notes」
59 回読まれています