2023/10/13 キノコのマリネ

※ユリオ、オタベック離脱後

 何度目かの紫紺さんと浅葱さんとの合同クエスト。いい加減お兄さんは僕らを信用してくれてもいいと思う。いや、僕らの信用が低いというよりも、二人の信用が高いんだろうね。

「いや、うん、ソウダネー」
「ラクサセテモラッテマス」

 ヴィクトルと紫紺さんが似たような微笑みを浮かべてそう言った。
 さて、現地に向かう途中で野営だ。すでに慣れたもので、僕らは家を出す。紫紺さんたちはそこまで大きくないという話だけど、こちらはこちらで快適なテントを用意しているようだ。
 今は四人で火を囲んでいる。

「勇利~キノコが食べたい」
「ん、キノコね」

 晩酌時、強請るように言うヴィクトルにマジックバックからそれを取り出す。「お?」と言う顔をした紫紺さんに見えるように開ける。

「キノコの、マリネ、か?」
「そう」

 エルフの人ってキノコが好きなんだよねぇ。季節になると村とかコミュニティ総出でキノコ狩りに行くぐらい。でも、ほら、その、ヴィクトルって、ね?
 僕が言葉を濁すと、紫紺さんと浅葱さんが「あぁ」と言う顔で頷いた。ヴィクトルが渋い顔をする。そんな顔もかっこよくてかわいいけど、こればっかりは僕でも擁護不可能だ。いや、特別なものを見つける素晴らしい目だとは思うけど。思うけど。毒キノコばっかり見つけるのは、ね。

「わふぅ」

 元気出しなさいよ。とばかりにマッカチンがヴィクトルに身体を摺り寄せた。
 まぁそんなヴィクトルのために、食べられるキノコが手に入った時はこうして保存食にしているわけだ。他にも干したりもするよ。僕の|魔術的隔離空間《インベントリ》は時間が経過しないけど、保存食は保存食で美味しいよね。
 これはオリエンシア大陸の美少年に教えてもらったレシピ。

「あそこはキノコ天国だったね」

 ヴィクトルでも食べられるキノコが採取できるっていう意味でもまさにそうだった。また行きたいねぇ。と言いつつ皿に移して出す。

「それじゃ私もマリネを出そう」

 そう言って紫紺さんが目に鮮やかな野菜のマリネを出してくれた。肉厚の、シャクシャクする野菜だ。あとはウリ、かな?

「あー、故郷の方にある野菜だ。パプリカと言う」
「へぇ」
「二人の故郷にも行ってみたいね」
「あぁ、いずれな」

 ニコリとほほ笑む。浅葱さんが「レオとヴィクトルは会わせたくないなぁ」なんてぼやいているけど、そちらにも色々いるようだね。
 お互いにマリネ液のレシピを交換しつつ、まだ食べたがっているヴィクトルのために七輪を取り出す。あとはこれでキノコを焼いて食べよう。

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