大好きなカノジョとステキなお誕生日を過ごすために覚えておきたい大切なこと

アイカツスターズ きらあこss。
2021年あこちゃんお誕生日おめでとうのssです。
きららちゃんとこれからも仲良く過ごしてほしい。


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 お昼においしいレストランで食事をして、その後電車に揺られて自然公園へ。コスモスが咲き乱れる花畑を歩いて一緒に写真を撮った。穏やかに晴れた空は淡い水色で、天気がよくて本当に良かったですわと彼女が微笑んだ。遠くの方で誰かが手を離してしまった風船が飛んでいくのが見えた。
 日が暮れかけた頃に帰路につき、うちに帰ってきてゆっくりお茶をお茶を飲んで、彼女が出演したドラマの録画を見た。彼女は新人ナース役で、ナース服がとっても似合ってるなと思った。
 夜は、自分が前日から漬け込んでおいたタンドリーチキンを焼き、近所のおいしいパン屋さんで買っておいたバゲットと、パスタとサラダを食べた。
 デザートはもちろんケーキである。猫の顔の形の可愛いケーキ。彼女がろうそくを吹き消して、ふたりでペロリと平らげた。
 自分が渡した、くるんとカールしたリボンが付いた包み紙の中には、ゆめかわなデザインの可愛い長財布が入っていた。彼女は弾かれたように笑顔になって、とっても可愛いですわね! と言ってくれた。
 そういうことがあって、今きららはソファの上でクッションを抱きしめながら溜め息をついていた。あこは今シャワー浴びている。それを待っている間、テレビでも見ようと思ったが、ピンとくる番組がなくて消してしまった。
 きららの表情は険しかった。
 本当にこれで良かったのだろうかという気持ちばかりが胸のうちから勝手に溢れてきてしまう。一日、あこと過ごしてとてもとても楽しかったのは本当なのに。
 これまできららは、お誕生日といえばサプライズが当然だと思っていた。実家ではずっと両親や親戚とも友人ともサプライズをし合うというのが習慣だったし、去年まではあこときららもサプライズをし合っていた。
 バースデーサプライズというのはとっても素敵なものだ。しかし、二人で一緒に住むようになり、長く時間を共にするようになれば、相手の考えていることが何となく分ってきて、サプライズの難易度が上がってきた。去年とは違うものをと焦ったり、だんだん同じようなパターンになってきてどうしようと悩んだり、贈る側の負担が大きくなってくる。 
 だから、一番ほしいものを先にリクエストしておくことにしよう、と二人で決めた。実際、今年に入って先にあったきららのお誕生日はリクエストに基づいて祝ってもらった。
 リクエストもなかなか良いものだなぁと思ったし、自分がしてもらった分、あこのお誕生日も素敵なものになるよう、全力でリクエストに答えようと意気込んでいた。
 何がほしい? と聞くと、あこからはかなり具体的で、詳細なリクエストが書面の形で渡された。自分の時もお手紙であこにリスエストを送ったのだけれど、その内容とは大違いだ。
 あこは旅行に行ったりするときもきちんと計画を立てるタイプで、今回のお誕生日リクエストも、店名や場所までは指定しないものの、どんなことがしたい、どんな風に過ごしたい、どういうものがほしいということがたくさん書かれていた。それに従って、今日は完璧なデートコースが実現した。きららが贈ったもの、考えたものをあこはどれもこれも喜んでくれて、サイコーの日になった。
 それなのに何故だかどこか物足りないのだ。
「あーあ、やっぱりサプライズでバルーンアート作るか、花火打ち上げるとかすればよかったかな」
 言ってみて、自分の言葉にハッとした。そうなのだ、やはり花園きららはサプライズが大好きなのだった。贈ってもらえるのも嬉しいが、誰かに驚くようなものを贈るのが好きだ。準備している間のワクワク、あげるときのドキドキ。それが好きなのだ。今日のプレゼントは全部リクエストされたもので、いつものようなワクドキが欠けていたのだった。
 ぽっかり空いた穴に気付いてしまったので項垂れる。すると後頭部をぐいっと指で突かれた。
「何を言ってるんですのあなたは」
「わっ、あこちゃん! 早かったね?」
「別に普段通りの時間でお風呂は出てきましたけれど? ……はぁ。穏やかな誕生日になってほっとしていましたのに、バルーンアートに花火……あなた、やっぱり良からぬことを考えていましたのね」
 あこが呆れたようにこちらを見ている。きららはむぅと頬を膨らませた。
「よからぬことって何その言い方!」
「うっ……良からぬというのはちょっと言い過ぎかもですけれど……それでもちょっとアレですのよ、あなたのサプライズは」
「アレってなに!? きらら別にこれまで変なことしてないよっ!?」
 メェ~っとしてみせるきららに、あこはテーブルに置いてあったキラキラフォンを取ってきて、写真フォルダを探った。画面に表示させたのは、去年の9月25日の写真のうちのひとつだ。
 あこ、そしてその傍らにカラフルなパステルカラーの2メートルほどにもなる大きなケーキが置かれている様子が写っていた。
「あなたが作ってくれたこのサプライズ巨大ゆめかわケーキ、嬉しかったですしとっても美味しかったんですけれど、学園に届けてくださって、めちゃくちゃ目立って、学内のみんなに写真を撮られまくりましたわ? あなたのプレゼントはいつも派手で可愛くて素敵ですけれど……その、周りからも注目されてちょっと恥ずかしいといいますか……ケーキも結局みんなで食べましたし、二人でお祝いというにはスケールが大きくなりがちといいますか」
 言われてみれば確かにあこの言う通りだった。サプライズを思いついて準備をしているときや、当日お祝いしている間はテンションが上がっていて夢中になっていたので気が付かなかったが、改めて思い返してみると、何かと大きな、驚かれるようなことをしようと、そのことばかりに力を注いでいたかもしれない。
 それに比べると今日は、確かにあっと驚くようなドキドキワクワクはこれまでよりは少なかったかもしれないが、あことゆっくり過ごした一日は穏やかで心地よくて、とても充実していた。きららは胸のうちがホットミルクを飲んだみたいにじんわり温かくなっていくのを感じた。
「あこちゃんは、きららと二人でお祝いしたかったんだね。二人っきりで、ゆっくりお誕生日を過ごしたいって思ってくれてたんだね」
「にゃ!? い、いきなりなんですのよ」
 きららが急に木漏れ日みたいに柔らかく笑ったので、あこはどぎまぎして視線を反らした。だからきららは追いかけるようにしてエメラルドグリーンの瞳を覗き込む。
「リクエストで最初からすることが決まってると、ドキドキワクワクに気を取られることもなくて、あこちゃんとの時間にいっぱい集中出来るってことなんだよね。きらら分かってなかった。いっぱい色んなこと紙に書いてくれてたけど、全部全部、きららとの時間をリクエストしてくれてたってことなんだよね?」
 あこの頬がみるみるうちに赤く染まっていく。リンゴみたいで可愛いなと思った。
「どーなの、あこちゃん」
「ぁう……なんでもいいでしょう」
 ぎゅっと目をつぶって、顔を背けたあこは濡れた髪の隙間から見えた耳朶まで赤くなっていた。ドクンと心臓が跳ねる。きららは、持っていたクッションを放り投げるようにソファに置いて、勢いよく立ち上がった。それからあこの耳元に唇を寄せた。
「そしたら、今日のサプライズは、ベッドの上でしちゃっていい?」
「にゃっ!?!? あ、あ、あなたなにを……!!」
「えへへ♡ お風呂いってくるね。楽しみにまっててっ」
 赤くなりすぎてわなわなと唇を震わせるあこにきららはウインクを一つして、意気揚々とリビングを出た。
「まったく、素敵な誕生日になりすぎですわ……」
 小さく呟いて、あこはきららの置いていったクッションを抱き締めた。
 サプライズが大好きで、なんでも自由で大胆で、ふわふわとどこかへ行ってしまいそうなきらら。穏やかな時間を楽しみながらも、ちょっと物足りなさそうにしているきらら。あこのことを大切に思ってくれて、気持ちをちゃんと受け止めてくれるきらら。
 そんな彼女のことが大好きだと改めて思って、余計に恥ずかしくなって困った。

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