21.抹茶黒豆玄米茶
おはようございます。
庭で目を覚まして『ヴァルの風の靴』で扶桑までもどり、山中にあるだいぶ様になってきた小屋へ移動。先ほどまで山の中を駆けていたのだが、天気が怪しくなってきたので小屋まで戻ってきました。
小屋に入るや否やかなりの土砂降り。山の天気は変わりやすいとはいえ、つい先ほどまでは晴れていたんだがな。一応増水を考えて川よりも一段高いところに建てているので大丈夫だと思うが――。
軽く心配しつつろうそくに火を入れると、薄暗くなっていた小屋が明るくなった。スキルが使えない扶桑では手間だったり不便だったり。私は一時のことなのでそれも楽しめるが――。まぁいい。
雨の中修行するのもいいのだろうが、今日はそこまでの気分ではない。足場が悪い場所で、というのも【運び】がある私にはあまり意味がないしな。
せっかくだし、生産をしよう。いや、ログインして雑貨屋の売り物の生産もしてきたんだが、扶桑に関するものはまだスキルで作っても評価がですね。とくに『兵糧丸』。まずいんですよ。相変わらず。評価が高くなったら味がましにならないかと、あれこれ頑張っております。なにより純粋に薬研をゴリゴリするのが楽しい。
「ごめん、ホムラ殿。ケイトでござる」
ごんごんと、雨音に交じってケイトがやってきた。生産の手を止めて入るように言うと、唐傘を差したケイトが入ってくる。モフモフの毛が雨で湿気てしんなりしている。
「何かあったか?」
「様子見と、いくつか用立ててもらいたいものがあってな」
ケイトと斑鳩には私が【錬金調合】と【料理】スキルをもっていることは話しているので、時折物々交換やらで尋ねてくるのだ。私は私で扶桑独自のアイテムなんかが手に入ったりするのでありがたい。
「それだと持ち合わせに数が足りないな。今作ってしまうのでしばらく待っててくれ」
「わかった」
ケイトにそう言ってお茶を差し出す。お茶というか、黒豆玄米茶だな。香ばしい香りがあたりに漂う。
ひくりと鼻をひくつかせたケイトが茶をするるのを見ながら作業を開始する。中間素材は揃っているので、大した時間はかからないだろう。
十数分後、出来上がったものを渡す。
「ついでにこれを」
「これは?」
「先ほどのお茶だ。湯呑一杯が匙二杯だ」
気に入ったようだったし。と言って私が言うと、ケイトが「かたじけない」と言って受け取り、また雨の中を帰っていった。止むまで雨宿りしていけばいいと言ったんだが、どうやら一晩中降るとのことらしい。現地人の予報なので確かだろう。
私はケイトをみて沸き上がったもふり欲を満たすべく懐から黒を引っ張り出しブラシをかけるのだった。めっちゃくちゃ抵抗されましたが、それはそれです。
powered by 小説執筆ツール「notes」
51 回読まれています