あいたくてたまらない

重音テッド×氷山キヨテル
お題配布元:確かに恋だった様



 放課後、生徒達が居なくなった教室で一人、氷山キヨテルは卓上カレンダーを見つめながら指折り数を数えていた。
「……十二、十三、十四」
 そこまで数えるとキヨテルは、はぁ、と深くため息をついた。その顔にはどこか疲れの色が見えるが別に教師としての仕事に疲れを感じてるわけではない。
 生徒への指導や、VOCALOID、バンドの仕事などで忙しいのには変わりはないが、これくらいの忙しさは想像の範囲内。いつも通りの日常生活。ただ一つの悩みを除いては。
「もう二週間か……」
 カレンダーの日付を指で追いながら、キヨテルは同居人であり恋人でもある重音テッドのことを考えていた。
 実を言うとこの二週間、テッドとまともな会話をしていない。かと言って喧嘩をしてるわけではないし、二人で住んでいるマンションに帰れば必要最低限の会話はしている。しかし本当にそれだけで、恋人らしいことや会話を全くと言っていいほどしていない。
 これまでにキヨテルが忙しい時期は何度かあったが、今回のようなことは滅多になかった。そのため、普段は恋愛事に積極的ではないキヨテルも多少の欲求不満を感じていた。
 名前を呼んで欲しい。キスをして欲しい。抱きしめて欲しい。一度考えてしまうと次から次へと想いが溢れ出てくる。
 でもだからと言って教師の仕事を怠るわけにはいかない。今はやらなければならないことが山とある。まずはそれらを片づけなくては。
「……よし」
 気持ちを切り替えるようにキヨテルは自分の頬を軽く叩いた。少し寂しいがテッドと触れ合うのは仕事が落ち着いてからにしよう。
「さてと、そろそろ帰ろうかな」
 腕時計を見ると既に二十時を回っていた。明日も早いし、今日はこのくらいにしよう。そう思いキヨテルは帰る準備を始める。ふと手元にある携帯を見ると、メールの受信を知らせるランプが点灯していた。そういえば近々バンドメンバーと会う約束をしていたことを思い出す。もしかしたらそのことについてかもしれない。
 相手を確認しようと携帯を開き、メールの画面に表示された『重音テッド』の文字を見た瞬間、キヨテルは驚きのあまり目を丸くした。
 メールを打つことがあまり得意ではないテッドが自らメールを送ってくるのはとても珍しい。そのせいかメールは平仮名ばかりで、文末には何故かウサギの絵文字がついていた。それでもキヨテルの心は喜びで満たされ、自然と笑みがこぼれる。
「メールありがとうございます。今から帰ります、っと。……ふふ」
 メールの返信をした後、キヨテルはもう一度テッドからきたメールを見る。短くてぶっきらぼうな文章が彼らしくて愛おしい。
 テッドのメールを保護したキヨテルは幸せに包まれながら、最愛の人が待ってる家へと向かい、教室を後にした。


  きよてるへ

  あまり むりすんなよ

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