2023/11/13 07.生姜な紅茶 ユリオ
それは、秋から冬にかけてのころ急激に冷えた夜のことだ。
「ぶえっくしょん! あ゛~~さみぃな今日は」
美少年がするには少々豪快なくしゃみをしてユリオが体を震わせた。帝国の北部出身だっていうユリオだけど、寒いものは寒いみたいだ。僕? とっくにヴィっちゃんを懐に入れてるよ。
ユリオとオタベックは帝都の大工さんに作ってもらった『持ち運べる家』にも作ってもらった暖炉の前に毛布を羽織って座っている。
「オタベック、ユリオ、お茶飲む?」
「あぁ」
「くれ!」
はいはい。と、返事を返してお茶を淹れる。寒いからね、ジンジャーをたっぷり入れる。それだけじゃなくブルのミルクと蜂蜜も一緒に。お茶菓子は町で買った焼き菓子だ。アーモンドの粉で作ってあるんだって。とってもいい香りがしてたので、思わず買っちゃったんだよね。ヴィクトルは素焼きしたアーモンドをポリポリしながら蒸留酒を飲んでる。傍らにはマッカチン。
さて、僕の名前は勝生勇利、どこにでもいる普通の冒険者だよ!
僕たちは現在帝国を出てセオッセ王国に来ている。目指すはアーモンドのトレントが出るダンジョン! で、途中で寄った街も周囲にアーモンドの樹がいっぱい植えられていて、これもダンジョンから持ち帰った木を植えたものらしい。春には白い花が一面に咲いて綺麗なんだってさ。
「わふっ」
ヴィっちゃんも食べる? 胸元から顔だけ出しているヴィっちゃんに問いかけると食べるとのお返事。オッケーと、名残惜しみつつ懐からヴィっちゃんを出して、マッカチンの前にも一緒に切り分けた焼き菓子を置く。
ぶんぶんと尻尾を振りながら食べる二匹を見ながら僕もお茶を飲む。ハー。ピリッとしたジンジャーの風味がブルのミルクでまろやかになっていいよねぇ。蜂蜜の甘さもぴったり。
「勇利、ダンジョンはもうすぐなのかい?」
「うん、後一日もかからないと思う。今年の冬はダンジョンかなぁ」
「それがいいだろうな」
帝国やドーンほどじゃないけど、冬が寒いのはこちらも同じだ。まぁ雪は降らないけどね。これから行く予定のダンジョンは、じっくり攻略すればそこそこ広いし、二月ぐらいかかるだろう。
僕としてもアーモンドはいっぱい欲しいしね!
「ダンジョン中のトレントが丸裸にされそうだな」
「たしかに」
ふむっと、気合を入れる僕に、カップを抱えながらユリオとオタベックがぼそりとそう言い合うのだが、僕は気が付かなかった。
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ヴィっちゃんとマッカチンは魔獣なんで人と同じもの食べてますが、犬にはやっちゃだめですよ。
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