17.知覧 ゆたかみどり
白峯がお世話になっている離宮を訪れております。
庭には春の花が咲き誇っており、ていねいに手入れをされているのがわかる。温かな春の日差しを受けながら白峯の歌を聞きつつ緑茶をすする。うん、まぁ、贅沢なんじゃないだろうか。
「最近は何かあったか?」
「今のところは特にないかな。先日の祭りも異邦人のおかげかそれなりに盛り上がったようだしね」
なぜか当たり前にいる右近に話を向けると、ちらりと意味深な眼差しを向けられてしまった。先日の祭りというと、扶桑で行われた破酒祭りのことだろう。はて、何かしたか?
「捕り物をいくつかした以外の記憶はないぞ?」
それにしたって私は一人しか捕まえられなかったしな。と返す。すると天音が「その一人が問題なのよ」と細く息をつく。
どうやら私が結果として捕まえるきっかけになった一心という男は本当にいろいろな悪事に手を伸ばしていたようで、その影響は小さいものから大きいものまで、中央にも及んでいるらしい。
まぁそもそもすでに秘かに調査が進められていたってぐらいだしな。私がしたのは最後の一押しですよ。
「そこに異邦人が関与したってことが問題なのよ……まぁ話を聞いて貴方だってわかったから、情報は止めたけど」
おっと、何かに巻き込まれかけた模様。やはり政治関係に関わるのは面倒だな。
マント鑑定結果【もう遅いのでは? という気配がする】
手甲鑑定結果【……うむ】
えぇい、知りませんよ!
ひとまず天音と右近にお世話になりますという袖の下を渡しておく。黄金のお菓子ではなく、桜色のマカロンですが。
マカロンの皮? 部分はさっくりもっちり。挟んでいるクリームもこちらも桜の香り付けをしたクリームだ。味もこだわったが、何より香りがいい。
「これは、可愛らしいね」
「綺麗ですね!」
きゃっきゃと、喜んでいただいて嬉しいです。形式として天音が先に食べて、右近が口にする。この辺りは貴人ならば仕方がないだろう。うちの必ずカルが先に食べるんですよ。カルがいない時はイーグル。イーグルは帝国では近衛騎士団に所属していたそうで、毒見とかの知識も一通り納めているそうです。私は大抵の毒は効かないどころか回復するんですが。というのは彼らも知っているが、無粋なので言わないところだ。
「左近は忙しいのか?」
「あぁ、それこそ先日の祭りで異邦人が大量に来ただろう? ホムラからもこれから多くの異邦人が来るだろうと言われていたし、その準備でな」
先日の帝国戦から逃れた玉藻もこちらに戻ってきている疑いがある。四家としてもいろいろ大変なようだ。左近に渡してくれと酒を渡し、ひとまず花見の続きを楽しむことにした。今度はペテロかカルでもつれてこよう。
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