更新 その2



枕元の携帯が鳴って、また起床時間の二時間前だった。
立秋も越えたとこやし、いい加減に普通の時間に起きてくれへんやろか……。
『私の43センサー、夏やからぶっ壊れてんのかもしれません。』
ロクさん、あんなあ、わたし眠いです。
人間、睡眠不足やとどこかぶっ壊れてしまいますんで。
当たり前ですがな。
とまあそないな風に思いながらも、いそいそとパソコン立ち上げて、暑いしお湯沸かすのも面倒やな~って最近買い始めたカフェオレベースにお腹冷えたら困るし、でちょっとあっためた牛乳入れて中に氷入れて……ひえひえの美味しいカフェオレとシーツに押し倒されるあったかくて可愛い小草若ちゃんと可愛くない年上のシーソー師匠……年上……??




***



「お前の落とした四草は、二十歳そこそこのこの落語とは全く縁のない倉沢忍か、それとも、人生の師と出会って落語に邁進しようとしとる徒然亭四草か。」


中折れを気にし始めた四草が、何年か前の『あの時』みたいに、またどこにもおらへんようになってしもた。
流石にもう女のとこには行きませんとは言ってたけど、どうやろなあ、と思いながらもあちこち探してるうちに、オレは気が付いたら、またしても【あの】池の前に立っていた。
家の仏壇の横にいるビリケンさんにそっくりの池の神さんが、またオレの目の前に出て来てもうた。
あんなあ、オレは、あのプライドばっか高くて、根性はずーっとネジくれてるまんまの、ふてくされた子どもみたいなあいつがええんや。
そのことに気が付いたんやから、もうあんたの出番とちゃうねん。
そないしてほんまのこと言うたところで、まーーたこのヒゲのおっさんは、本物とは似ても似つかん、綺麗で優しい別人をオレに寄越そうとするんやろ。

今は夢の中や、別人に抱かれたかて、罪悪感に苦しむ必要はなんてない、て思ってたけど、いつものあいつより低い体温にゆっくりと深く抱かれて、計算もなしにこっちを見て緩むまなじりにときめいて、優しい言葉で真綿にくるむみたいに大事にされて、かと思えば、強い力で掻き抱かれて、初めての体位で、乱暴に後ろから犯されて、訳が分からんほど気持ちのええ思いして。
そういうのが重なるほど、目の前の男はあいつと違う、て気づかされるし、それだけで胸が苦しなった。
あいつを忘れるために抱かれてたはずやのに、時々、気紛れみたいに寄越される憐憫の視線と、優しくされた記憶が思い出されて。
あんたが誰を寄越そうと、それがオレにとってほんまにええことやとしても、オレはもう……望む相手を間違えたくはないんや。

……それにしても、若い頃のあいつて、今の不機嫌なときのあいつと、ちょっとも目付き変わらんな。
もしも、この頃のこいつとやり直せたら、オレとあいつは別の関係になるかもしれへんな。末っ子の分際で生意気なんじゃ、て態度を止めて、あいつの前でちゃんと兄弟子でおろうとして最初っから頑張ってたら、あいつは無理やり布団の中に入って来たオレに触って、泣かせようとまでは思わんかったかも。
……たらればの話なんぞしたところで、今は意味がないけどな。

「それならその、二十歳の四草でええわ。今より早そうやし、オレのことゆっくり抱かせたる。」
蓮っ葉な口利いて、大口叩いて、と心の中では思っとるけど、今はもう、四草と寝始めた頃の経験値の低いオレとちゃうで。
四草のを舐めるのもちょっとは巧なったし、もう喉につかえて泣いたりとか……たまにしかせえへんし、うっかり嚙んだりとか……たまにするけど、乳首噛まれたり吸われたりしてる仕返しとちゃうし。
あいつが、出したらあかん、て我慢してる顔も、気持ちええ、て理性手放して腰振ってる顔も、全部見たい。
オレだけのものにしたい。ちょっと中折れするようになったくらいで、オレはあいつのこと見捨てるつもりはないのに。
いくつになってもあいつに抱かれたいし、あいつにもオレのこと抱いてて欲しい。
だからオレは………。

「正直なお前には、これをやろう。」
「なんやて?」
光った池の中から出て来た四草は、目付きが険しいて、雰囲気が違う。
出会った頃のあいつよりもずっと、算段の平兵衛に近い。
「俺はこんなアホと四六時中一緒におるくらいなら、池に戻った方がマシや。」
吐き捨てられるように言われて、背筋が震えた。
あの頃の四草も、師匠の前以外で『僕』と言うことはほとんどなくて、お互いに呼び合うときがあったとしても「あいつら」「お前」としか呼んだことなかった。
はあ、とオレはため息を吐いた。
一遍オレのこと抱かせたら、それでこのアホの池の神さんも納得するかもしれへん。


***

「ヒトシ、お前ん中、ほんまに熱い。」
「しいそぉ、しい……オレ、っ、こわい、……あーーーーー!」
三度目に、オレの中に放たれた若い四草の精は、何度出してもずっと冷たくて。
一遍だけのつもりやったのに、結局、こないなことになってもうた。
こんなん、浮気やのに。
全部出してええから、とばかりにオレの尻は若い四草のゴリゴリになったアレをぎゅっぎゅに締め付けてる。
いつもとは角度が違ってて、……初めて最後までする日の前にオレのちんぽに触って来たアイツみたいに、固くして、オレの尻に当ててて。
「オレをその、四草てヤツの代わりにしたいなら、好きにしてええけどな。あんた、そいつでちゃんと満足してんのか?」
「っ、あ、やっ……あ!」
また浅いところを擦られて声が出た。
「も、ええやろ……なあ……抜いてくれ…………。」
「何言うてんねや、こないにとろとろにしといて。」
おっさんのくせにやらしい身体してんなあ、と言われて、途中まで引き抜いた姿勢で手を伸ばしてきた若い四草に、プツン、とちんこに生えた白髪を抜かれた。
「ふ、ざけん……あっ♡」
濡れそぼった前を手早く扱かれて、目の前がちかちかする。
「あっ♡♡♡ んんっ♡♡♡ あっ……♡♡♡」
腰の振り方はさっきまでピストンしてたみたいになんぼでも緩急を付けられるのに、今は早く出せとばかりに、雑な手つきで。
だいたい、今まで抱いたどんな女よりエロい、てなんやねん。
デリカシーなさすぎやろ。
まあ、こないな顔なら、自分で右手を使ってするより、オネーチャンの身体を使って性欲を発散してた方が長かったんやろな、とは思うけど。
こいつが必要なんはオレの尻穴だけとちゃうか、と思っても、それでも、この顔で触られたら……アカン。
「あ、や、あぁ……出る、出てまうからぁ……!」
「出してええで。」
お前も余裕ないくせに、て言いたいけど、あかん……固くて大きいのに、奥までぐりぐりされて……。
「は、はあ、あっ………。ああーーーーーー!」
生意気盛りの末っ子の時代よりまだ若い顔をした四草は半笑いの顔になって、途中まで引き抜いたアレを、今度は、オレの中の奥の奥まで突き入れた。
足を肩に載せる姿勢で、不安定で、繋がってるところが見えてて、ご立派なちんぽにケツのとこをぐりぐりされたら、もうそこで降参してしまう。

頭の中が真っ白になってまう。




***



「…………えっ、小草若ちゃん、前よりもっと別人やのに、それでええの?」

気が付いたら、小草若ちゃんの身体は『四草になる前の二十代の倉沢忍』という触れ込みでやってきた池の神さんの用意した「次の男」に口説かれて、身体をいいようにされてた。
この間は大事にされて心で感じてたのに、今度は乱暴にされて身体で感じてるて……。
いや、どんな設定でもエロくて可愛いですけど。
しかも今のシーソー師匠が時々中折れしてはるて……明らかにスローセックス必要な世代になってきた推しの設定ぶっこんで来たけど、我らのシーソー師匠は一生通天閣ですから……て思ってますけど……思ってますけど……。
くっ……。私も43センサーもあかんようになってる気がする……。


***


何度か意識が飛んだ。
四草が腰を動かして、前立腺を擦るたびに起こされた。
全部オレにくれ、て。
そないな言葉、もう何年ぶりやろ。
もっと聞きたい。
オレだけ見て、しっかりオレのこと捕まえといてくれ。
「ん、あっ…そこ……。あーーーーーー!」
「ドライでイッたみたいですね。」と言いながら、四草もオレの亀頭をやらしい手つきで触ってる。
「あ、、そこ、触るな……っ。」と言うと、「それなら、直接触るのは止めときます、」といけず言うて、イチゴの味の付いたゴムを被せた上からまた撫でた。
「後でまた、シャワー浴びながら可愛がってあげます。」と年上の顔を見せる男に甘い声で言われて、奥がきゅんと締まった。
中の四草はまだ固いままになっとる。
「なあ、しぃ、お前今日はなんや……、」
「僕がまだ萎えてへん、て言いたいんですか?」と言われて、真っ赤になった。
「確かに、そうみたいですね。」
四草は他人事みたいにそう言って、固さを保ったまま、長いストロークをしながら、オレの唇に噛みつくようにキスをした。
「こういうの、兄さんのことあの妙な夢で二輪挿しした夜からですよ。」
ご利益ですかね、と言って、四草がオレの中から出てしもた。
「あっ、」
ちゃうねんて、嫌や、出んといて、と懇願する暇もなく、潤滑剤の緑色が尻穴からコポコポ、と音を立ててこぼれ出てきて……。
「まだひくついてますね。」
尻穴の周りを指で押されて、ひゃあ、と声が出た。
「み、見んといてくれ。」
あかん、久しぶりやからって、こんなことくらいで恥ずかしがるとか……おぼこいふりしてるだけやと思われてまう。
「……しぃ、オレな、」
もう一遍したい、あかんかな、とは言えずに四草の首にぎゅう、と腕を回そうかとしたら「ゴム替えるからちょっと待っとってください。」と言われて、チュウ、とキスされた。
「……うん。」と頷くと、これまでずっと見たかった笑顔が見れた。
またいっぱいしような。


***


え?

小草若ちゃん総受けやってみたいけど相手が四師匠でないと私も起たんのでと言わんばかりのこの超設定……そういえばスポ馬さんの一個前のジャンルて、ゲームの越境ネタやったらしいけど……。
なるほど便利ですね。
(夏ですね。)

なんやもうありがとうございます、て言っといたらええんやろか。

てかこっちはこないだの続きも読みたいんですけど………。
いきなり別の章立ての続編かーい!!
うっ。四草師匠の若い時代なんて、もうただの捏造やないですか……。
(いけずで可愛かったけど、それはそれていうか。)
(小草若ちゃんの薄いお尻ペンペンしてええのは四草師匠だけなんで。)

スポ馬さん今回はオチっぽいとこまで話持ってってくれてるし……ほんま今回も小草若ちゃん可愛くてヤバイけど……ヤバかったな……もう一遍前の話読んでまお……。

あっ、もう七時なってまう!こないに早く起きたんに、もうぼちぼち会社行く支度せな間に合わん時間やん!
朝御飯はもう会社の近くの立ち食いそばでええか……あの立ち食い、立地は最高やけど、曜日によってはヘーシャの偉いさんの隣で飯食うことになるからほんま気まずいんよね。

遅刻寸前になってまったんやけど、て電車ん中でロクさんに抗議のメール送っとこ……。

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