ルーシル3


 二人が初めて出会ったのは薄暗い地下の拷問部屋だった。
 シルヴァンはその囚人に気になるところがあり拷問に立ち会った(死刑執行人は拷問に立ち会っても絶対に手を出すことはない)。その時に尋問を行なっていたのがルー─フィエルテのニックネーム。シルヴァンはこう呼んでいる─だった。
 他にも数人の拷問官がいたが、ルーだけは異色だった。長く青みがかった黒い巻き毛と貴族を思わせるような衣装を身に纏っていた。どこか気品のある姿に目を奪われた。
 「(まさかこんな男が拷問官にいたとは。どう見ても王侯貴族じゃないか。それなのに汚れ仕事なんかしているのか)」
 ルーはシルヴァンの視線に気付いた。彼の姿に見覚えがあった。その出で立ちはまさに……。
 「貴方は、確か……」
 「私のことを知っているのですか」
 「実は先日、処刑場へ行ったのですがそこで貴方の姿を見て……」
 数週間前の出来事を思い出す。時間は経っていたがはっきりとシルヴァンのことを思い出せるくらいには記憶に残っていた。それほど印象的だったのだ。
 
 彼らは後に顔をあわせる機会が増え、次第に仲が深まり二人の間でささやかな絆が生まれるようになった。

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