第51回 #新ゲワンドロ
Q
普通にソリをひくのじゃダメだったんですか
A
どうしてもシーザー(動物のお医者さん)が出て来てしまって犬以外はちょっとってなりました。いっそレオとシンでもいいかと思いましたが、お茶漬が不幸な目に合うのが目に見えたのでやめました。
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ソリレース
ただ今、北の方の村に来ております。今日はここでイベントがあるということでイツメンで来たのだが……。
「|橇《そり》レースだそうです」
「そうですね」
参加者は一名から。ただし、橇を引くのは自身のペットか騎獣とのこと。どうやら村おこし的なイベントらしい。とりあえずここまで乗ってきた騎獣をそれぞれ振り返る。
「お茶漬の黒焼きは平気でし?」
「めちゃめちゃやる気ないね。そういう菊姫は」
「あてしの白雪もでし……」
もぞっと、動くお茶漬の青いドレイクの黒焼きの動きはちょっと鈍い気がするし、菊姫の白猫の白雪は私の白虎とペテロの黒天の間に挟まって暖を取っている。
騎獣やペットには明確に冬眠などはない。そもそもあれは例外があれど食料が少なくなる冬に使用エネルギーをギリギリ生命活動ができるところまで下げるためにするわけだから、ちゃんと食事がとれる騎獣には無用だ。
が、やはり種類によって得意、不得意な気候はあるようだ。
「ホムラとペテロは?」
「やる気十分です」
「私の方も」
アムールトラは寒さに強いので、多分そちらの特性が出ているのだろう。白雪を挟みながらも尻尾はやる気十分のようだ。
「俺のアルファ・ロメオも元気だぜ~」
「いつも以上にもっふもふでし!」
「冬毛、素晴らしかったです」
レオが赤い狸の首に腕を回しながらいつも通りの笑みでいう。狸も換毛があるんだな。実に幸せな時間でした。
「武田くんも問題なーし!」
白い息を吐きながらもシンの武田くんはブルブルと嘶きシンの髪をもしゃっと噛んでいた。
*
それじゃ参加しようか。と、改めて受付でルール説明を受けた私たちは思わず顔を見合わせる。
「え、引っ張るのは騎獣と、主人?」
「騎獣と主人の絆を確かめるため……?」
「ソリに乗せるのは村の名産の白菜……」
どうやらそういうことらしい。ちなみにゴールまで運べた白菜は参加賞としてくれるらしい。それはちょっと嬉しい。しかし、スピードがだいぶ違うと思うがいいのか?
「速さと白菜の重さでそれぞれ、それと総合優勝があるみたいだね……」
まぁ、それぞれ得意不得意があるだろうし、主人が一緒に走る以上は種族による違いもそこまでレースに影響するわけではない。ということなのか?
どこか納得でないものを感じつつも、ここまで来て参加しないのもなんだからな。と、全員で参加登録をした。
結論から言うと、速さはぶっちぎりでレオ&アルファ・ロメオコンビでした。早すぎてソリの上に乗せていた白菜が吹っ飛んでしまったので、重さの方では最下位だったんだが。村中にドップラー効果で響くレオの笑い声はシュールの一言だ。
重さ部門ではでっかい斧装備のプレイヤーが取得していた。タイムは最下位で、ついでに騎獣らしい狼に後ろから齧られておったが。大丈夫かあれ。あまがみか? あまがみの範囲か?
「そして総合優勝はホムラと」
「白虎、乗り心地特化なのに」
「本人の|STR《ちから》と|AGI《すばやさ》が高いでし」
「白虎も低いわけではないしね」
白虎はとても頑張ってくれました。お礼にハルさんのミルクで作ったアイスをたっぷりとあげながらモフモフする私。白菜たくさん嬉しいです。まぁ、仲間たちが運んだ白菜も私の【インベントリ】に入ったので、しばらく白菜料理が楽しめます。
「ところでレオはどこまで行ったんだ?」
「ゴールぶっちぎってそのまま走っていっちまったしな……」
「とりあえず死んではいないみたいだし」
そのうち戻ってくるでしょ。と、お茶漬。はい、通常運転です。
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