140文字の物語


◆いつか父となった日に

 家が没落した後は苦難の日々だった。しかし今は『再興の時代』だと国王陛下は仰った。それなら自分もいずれは一家の長になりたい。そして新たなシャノワーヌ家として歩んでいきたい。そう願った。これはあの日から十数年が経過した頃のお話……。
 2022/1/9


◆à minuit 

 まだ寝ないの、お父様?──テレーズは言った。私は日誌を書き綴っていた手を一瞬止めて娘の方を見た。君はもう寝なさい──父はまだ眠るわけにはいかないのだ。今日の執行について記録するまでは……。
2021/12/4


◆忘れられた部屋の双子

 宮廷には「忘れられた部屋」という一室が存在する。誰もそこに近寄ろうとはしない。双子の亡霊が棲み着いているという噂がある。その部屋に続く廊下は空気が重く、誰もいないのに足音が聞こえるなどの体験をした家臣もいるらしい。──双子は今も待っている。誰かが遊びにきてくれることを……。   2021/11/26


◆シャノワーヌ兄弟の肖像画

 両親は子供たちの「今」の姿を残したいと思い画家に絵を描かせた。その絵はシャノワーヌ邸の書斎に長く飾られていた。家が没落する頃、その絵がどうなったのかは子供たちは知らない。そして彼らは生き別れてしまう。絵のように四人ではいられなくなった。    2021/11/12

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