フルーツジュースにご用心♡

アイカツスターズ きらあこss。
手作りフルーツジュースを作ってくれたきららちゃん。ジュースを飲んだあこちゃんは……?
あまあまでラブラブなきらあこをやりました


******************************

 仕事を終えて家に帰ってきたとき、リビングからウィンウィンウィンと小さなモーター音がした。何だろうと思って見てみれば、エプロンをつけたきららがいて、ミキサーを使っているところだった。
「ただいまですわ」
「あこちゃん! おかえり~!」
 きららは嬉しそうにあこを振り返る。ミキサーの中には淡いピンク色の液体が入っていた。きららはスイッチを止めて、中を確認してから早速それをグラスに注いで、あこに向かって突き出してくる。
「はいっ、ちょうどできたてホヤホヤの特製ドリンクだよっ!」
「相変わらずいきなりですわね。今度は一体何ですの?」
 疑いの眼差しだけを返すあこにきららはむぅっと唇を尖らせた。くるんとカールした睫毛も揺れる。
「もう! なんでそんな反応なの!? さっきひとくち味見したけど、超おいしかったんだからっ! 美容と健康にもいいものばっかりだよ? いちごとバナナとりんごでしょ、マンゴーとパイナップルと、あとアサイー。牛乳に、それからちょっぴり生クリームも入ってて――……」
 きららは指折り数えながら先程ミキサーに入れた食材を告げる。あこは目をぱちくりさせてから、ほっと胸を撫で下ろした。また何を作りあげてしまったのかと思ったが普通のフルーツジュースではないか。そういうことならいただきますわと、グラスを受け取ってごくごくと喉を鳴らして飲んだ。
 どろりとした舌触りのジュースは、甘くて酸っぱくて、南国を思わせるようなトロピカルさもある。きれいなピンク色はいちごとアサイーが多めに入っているからかもしれないと、脳内コンピューターを弾きながら思った。するときららがニヤリと口端を上げた。
「――それからね、どんなツンツンな子もめっちゃ素直になって好きな人にデレデレになっちゃう薬も入ってるんだよ♡」
「にゃぁあああ!?」
 可愛くウインクしたきららに、あこはジュースを吹き出して大声を上げた。
「あこちゃんがちゃんと飲んでくれてよかった~♡」
「あああ、あにゃたっ!! にゃんてことしてくれたんですの!? シャーッ!!」
 いつもより激しく爪を立てて怒りを顕にしたが、きららは全然堪えていない様子だ。
「そんなに怒ることないじゃん。まぁ言ってるうちに薬が効いてくると思うし、今のうちに怒っといたらいいけどね~」
「最悪ですわね!?!? っていうかなんなんですのよその薬とやらは! デレデレがどうとか!!」
「どんなツンツンな子もめっちゃ素直になって好きな人にデレデレになっちゃう薬! だよ!」
 真剣な顔で言われてあこはたじろいだ。何だか冗談みたいな名称だが、本当にそんな薬があるのだろうか?
 ――あるかもしれない。
 きららならそういう得体の知れない何かを見つけて来かねない。世界中を旅しているNVAのツテがあれば、あまり知られていないような小国の村に伝わる秘薬的なものを手に入れることもできるのではないか。
「あこちゃん、そろそろじゃないかな? 体がじんわり熱くなって、胸の奥がほぐれていく感じ、ない? そのあと胸がきゅんってして、好きな人にデレデレになっちゃうんだよ♡」
「にゃっ!?」
 そんなわけないだろうと思うのに、あこの体は確かに変化していた。きららの言う通り、少し体温が上がったような感覚がある。鼓動も次第に速まってきている。
「まー別に効いても効かなくてもいいんだけどさ。あこちゃん、そのグラスこっちに置いとくね」
 きららはあこの手から半分以上中身の減ったグラスを取って、あこに背を向けてテーブルに置いた。何事もなかったかのような振る舞い。それからくるりと顔だけ振り返って、ふんわり微笑んだ。
「あこちゃん? だいじょぶ?」
 その瞬間、胸の奥がきゅんと強く震えた。何だろうこの感覚は。熱くてふわふわで、愛しい気持ちがとろとろに蕩けていくみたいだ。これが薬の力なのだろうか。
 そうであるならば、少しくらい身を任せてやっても良いかもしれない。得体の知れない、対処法もよく分からないものに対して変に抵抗するのは得策ではない。全部薬のせいにしまえばいいのだから。そんなことを脳内コンピューターをカタカタさせて思うけれど、既に意識はぼんやりとしてきていた。
 あこはほとんど衝動的に、後ろからきららを抱き締めた。白い首筋に飛び付くように。そしてピンクと水色の混じった後れ毛の辺りに鼻先を押し当てて熱っぽく囁いた。
「きらら、あなた今日も可愛いですわね♡」
「えっ! あこちゃ……!」
 白磁のように滑らかなきららの頬がすぐに桜色に染まった。抱き締めたところからきららの心音が感じられる。普段はぐいぐい来るくせに、時々こんな風にしおらしくなるのでたまらない。
 いつもなら羞恥が上回って、こんな思いなどめちゃくちゃに誤魔化してしまうところだが、どうにも今日はそうすることができそうになかった。胸の奥が柔らかくほぐれて、自分は今デレデレになっちゃっている。それはなんだか、とっても心地良いことだった。
「あなた、自分から仕掛けておいて恥ずかしがってるんですの? まったくしょうがないですわね♡まぁそういうところも好きですけれど♡」
「あう……♡」
「ほら、なんとか言ってみなさいな」
「えっとね、きららもあこちゃん、すきぃ……♡」
「よく言えましたわね♡きらら、大好きですわ♡ほら、こちらを向きなさいな♡キスしてさしあげますわ♡♡」
「うん♡♡♡」
 背中にあこの温もりを感じる。いつもは手を握ることすら未だに恥ずかしがるあこが、今はきららの肩に手を回して自分から抱き締めてくれている。耳朶にあこの吐息がかかる。今までこんな風に後ろから抱き締められたことがなくて、きららの胸は震える。多幸感が胸いっぱいに広がっていった。
 唇を重ねて、それだけには留まらず舌を絡めて貪り合う。あこの舌先にはさっきの特製ドリンクの甘酸っぱい味がほんのりと残っていた。離されたくないから、回されているあこの腕をぎゅっと掴む。そして思った。
 ――あこちゃんって、ほんと可愛い。どうにかなりそうだよ。
 だって、あのジュースにはどんなツンツンな子もめっちゃ素直になって好きな人にデレデレになっちゃう薬なんて入っていないのだ。普通のフルーツジュースに媚薬をちょっぴり垂らしただけのシロモノで、言動までコントロールする効果はないのだから。
 ――あこちゃん、催眠術とかにもすぐかかっちゃいそうだよね、ほんと危なっかしいなぁ。でも、「好きな人にデレデレになっちゃう」って言ったら、すぐにきららにデレデレになってくれて、ほんとにほんとに嬉しいんだからね。
 我慢できない、触ってと言えば、後ろから抱き締めたままで胸やお腹にあこの指先が這わされた。愛しい人の匂いに包まれながら、されるがままになっている。その状況がきららを余計に燃え上がらせた。いつもよりもキモチよくて、くらくらする。
 ――1回やっちゃえばあこちゃん、なんだかんだでおねだりすると同じのしてくれるんだよね。ネタばらししたあとも、こういう体位これからいっぱいしてもらお♡ 特製ドリンク、ほんとに効き目ばっちりでよかったなぁ。
 頭の片隅でそんなことを思いながら、あこの唇をちゅっと吸ってやるのだった。

powered by 小説執筆ツール「notes」

38 回読まれています