数えても数えても - デプ+ウル+ロラ

 榛に囲われた虹彩、血色の変わりやすい薄い瞼、槍先みたいな鼻筋、力が抜けると垂れる眉尻。
 笑顔を覚え始めた口角の皺、定規を当てて描いたみたいなスマートな顎のライン、角度のついた丸い耳殻、血管の浮いた太い首。
 鉄板入りのぶ厚い胸、常に張り詰めた太腿、大陸を跨いで余りある脚、むちむちで四角い尻。
 かさついた掌と跡の消えない節立った手の甲、実はやんちゃな指。
「何だ」
 夜に赤土を撫ぜる風みたいな声。
「ンフ 何だろうね」
 それから、それから。


 踊るように動く眉丘筋。甘え上手な垂れた眦、線の太い鼻梁、高い頬骨。角度の自在な口角。
 流暢で表情のある声、色の出やすい首筋、しなやかな腕、力強い掌、厚みを錯覚させる腰、柔軟な下肢、丸く締まった尻、起伏がある胸、身軽な全身を覆う健気な斑らの肌。
「……金取るよ」
 内気な濃淡のあるブラウンアイ。
「払ったらどこまで許される?」
 それと、これと、あれと。


「ローラ、置いていくぞ」
 どこかで躊躇いを残したまま、不器用に慈しむ音をくれる声。
「どうかした? プリンセス」
 おどけた笑顔を見せて、ずっと奥深くまで思いやりに満ちた柔らかな視線。
「……まるで良い人たちと、良い子みたい」
 それらはいつも惜しみなく私に与えられるもののうちのひとつで、ふたつ。
「まるでってなんだ」
「間違いなくローラは良い子だろ? もちろん俺たちもいいオトナ」
「この惨状を作っておいて?」
 バーの床一面に呻めきながら這う客たちと、店員が窓ガラスに突っ込んだのと、カウンターに沈んでいるのが何人か。バーのドアに背中を預けたローガンは周囲を一通り眺めて首を竦めて、ウェイドは足元の間近に伏せた女の手からナイフを蹴り出している。
「まあね」
「こいつらが悪い」
「そういうことにしておこう」
「……早く行こう、警察はきらい」
 控えめに背中を押す手と、ドアを押しひらく手。
 それらがくそったれな世界から私を救い出した彼らがくれる、いちばん素晴らしいものたちだ。





@amldawn

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