おしぬい

パレス内の部屋の一つ。
アルビナスはそっとケープの下から小さなものを取り出した。
主に似せた、赤い角のついた、ぬいぐるみ。
手先の器用な魔物が得意と聞き、特別に拝み倒して(ほぼ力ずくともいう)作ってもらったものだった。
禁呪法で自分の魂を分け与えたら、これも私たちのように、動くのだろうか。
じっとぬいぐるみの顔を見る。
デフォルメされた大きな目がうつろにこちらを見つめ返している。
「……」
口を、とがらせる。
馬鹿なことを。
わかってはいるのに。

唇が触れそうになったとたん、扉が大きく開いた。
飛び上がりそうになるがなんとかこらえる。
入り口にいたのは、ぬいぐるみ……のモデルだった。

「何だ?」
あわあわと腕とともにケープに隠そうとした物を、見つけられてしまう。
──もはやこれまで。
隠し立てするのは状況を悪化させるだけだ。
恐る恐る差し出す。
「これは……、オレか?」
はい、と答える声はみっともないほど上擦っている。
くるりとひっくり返し矯めつ眇めつ眺めると、返される。
「良くできている」
ぽんぽん、と、肩を叩かれた。

──それだけ?
ぬいぐるみを受け取る。
もっと、こう、呆れられるかと思った。
あるいは、怒るか。
「アルビナス」
「はい」
「……こいつにはして、オレにはしてくれないのか?」
目の前の主の、青い肉厚な唇が僅かにとがっている。
昇る血もないはずの顔が、赤熱した。

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