15.YUME

 尻尾が生えました。
 『異世界』のイベントで、プレイヤーやそのPETに尻尾が生えた。どうも妖精のいたずららしい。なんでもありだな。獣人もそれぞれ自分の種族とは違う尻尾が生えているようだ。なお、人型以外は除外された模様。
 ペテロ、リデル、A.L.I.C.E.が黒い猫の尻尾なあたり、持っている属性に寄るんだろうな。と、いつかの猫幼女を思い出しながら遠い目をする。
 ちなみにレオは風の属性の方が出たのかミスティフを彷彿とする赤茶色のビロードのように艶やかな毛並みの尻尾に変わっていた。撫でまわしたいが、リアルな姿を知っている身としては断腸の思いであきらめました。

「マスター、リデルの尻尾を触りますか?」
「ぐっ、い、いや」

 リデルが艶やかな尻尾を手にして私の方に突き出してくるが、幼女の尻尾を触りまくる成人男性。アウトです。

「ホムラにも立派な尻尾があるじゃない」

 笑いを含ませながらペテロが言う。そういうペテロの尻尾は長毛種っぽい黒猫のもの。それが私を誘惑する。ペテロは中の人を知らんのでセーフです!
 そしてペテロの言うとおり私の尻尾はおそらくユキヒョウのものらしい太くて長い立派な尻尾です。

「まぁ、たしかに。もっふもふです」

 自分の尻尾を触りながら私が言う。よくユキヒョウが自分の尻尾を銜えてたり枕にしている写真を見るが、なんとなく気持ちがわかる。自分のものながら、なかなかのものですよ。

「よかったね」

 ついに笑いを隠せなくなったペテロが震えながらいう。どうやら無意識に自分の尻尾を黙々とモフっていたようだ。いやだが、この尻尾なかなかだぞ。
 ほら。と、ペテロの方に長い尻尾を向けると、いいの? と、視線で問いかけてきたので頷く。ちょっと自慢したい気持ちがあります。
 まふっと、ペテロの手が私の尻尾を軽くつかむ。

「これは……すごいね」
「だろう?」
「マスター、私も触っていいですか?」
「MASTER……」

 リデルが私のお伺いを立て、A.L.I.C.E.がペテロに、ペテロに「いい?」と聞かれたので頷く。幼女に触れるのはアウトだが、逆はまぁいいんではないでしょうか? あれ? だめか?
 二人が私の尻尾に触れると、無表情な中にも「ふおおおお」と、感動したらしい色が見えた。
 お礼に、と、ペテロの尻尾も触らせてもらいました。長毛種もいいよな。やっぱり。



 その後、雑貨屋に戻ったら鳥の尾羽みたいな尻尾を生やしたマーリンがいたりする。そう言えばPET枠でしたね!!!

「主、素晴らしい毛並みですね」
「あぁ、そうだろう」

 カルに入れてもらった紅茶――本日は甘くやわらかいバニラや、甘酸っぱいフルーツの香りが広がる茶葉をミルクティにしたものだ。柔らかな香りが幸せな気持ちにする。
 そして紅茶を楽しんでいる私の尻尾はカルによってヴェルナに貰ったブラシで丹念にケアされ、よりもふもふになったことをお知らせします。

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マーリンは鵺=アシャに封印されていた。なので、暫定で鳳凰の尻尾が生えていることにしました。

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