『Crazy:B』のオールナイトパーティ

(オープニング曲IN)

HiMERU:「『Crazy:B』のオールナイトパーティ」をお聞きの皆さんこんばんは。めっきり冷え込んできましたね。温かくして過ごしていますか?
燐音:こんばんちゃ〜っす。おでんでも食いたい寒さだねェ
HiMERU:ああ、いいですね、おでん。天城はどの具が好きですか?
燐音:メルメルいい質問〜。俺っちは大根が好き
HiMERU:何の面白味もない回答をありがとうございます
燐音:きゃはは何ソレ、おめェはどうなんだよオイ、面白ェこと言ってみろよォ〜(HiMERUの肩に肘を置く)
HiMERU:ちょっと、絡むのやめてくれます? HiMERUは卵が好きなのですよ。ゆで卵も良いですが出汁巻きならなお良いですね
燐音:おめェも普通じゃねェかよ……ニキくん聞いてる? 明日のお献立はおでんで頼むわ! てなワケで始まりました「『Crazy:B』のオールナイトパーティ」、略して「CANP」! 本日のパーソナリティは俺っち天城燐音と
HiMERU:HiMERUでお送りします。それから――今宵は特別ゲストをお呼びしているのです。……副所長?
燐音:お〜い蛇ちゃ〜ん、あっこいつ寝てンぞ
HiMERU:またまた……………………寝てますね
燐音:蛇ちゃ〜ん、オイ、茨クン起きて。OA始まってるっしょ
HiMERU:誰がこの状態でGOサイン出したんですか? あっT田(AD)、後でしばく
燐音:何? ふんふん……(カンペを読む)ウチの超有能な副所長サン、四徹目でゲスト来てくれてっから? たまには許してやってくれ? 生放送で何言ってンのラジオ舐めてるンですかァ〜⁉
HiMERU:――当番組ではリスナーの皆さんからのメールを募集しています。各コーナーへのお便りは勿論、ゲストへの質問やあなたの好きなおでんの具も、どしどし送ってくださいね。アドレスは××××××××アットマーク×××ドットジェイピーです
燐音:有能な奴は生放送中に寝ませ〜ん‼
HiMERU:――こほん。「今夜は☆朝まで☆狂喜乱舞」
燐音:(小声)やべっ、……「『Crazy:B』のオールナイトパーティ」スタートっしょ!

(テーマ曲IN〜F.O.)

茨:やあやあリスナーの皆さんこんばんは! ご機嫌よう! 『Eden』、そして『Adam』の七種茨であります!
(マイクがハウリングを起こす)
燐音:オイオ〜イ。誰かこのド素人つまみ出して
HiMERU:気持ちはわかりますが抑えてください天城。七種死なねえかな
燐音:メルメル全部出てっから。出ちゃいけねェもん出てる
HiMERU:今のは『fine』の日々樹渉さんによる声帯模写なのです
燐音:流石に無理があるっしょ
茨:御二方! 夜もすがらお勤めご苦労様であります!(マイクがハウリングを起こす)
燐音:もうヤダこの副所長
茨:今はフリートークのコーナーですな? 先週は揃ってお休みを取っておられたようですが、どこかへ行かれたんですかね?
燐音:ん? ……ん?
HiMERU:(それ言って大丈夫なヤツ? という顔)
茨:あれあれ〜? ご丁寧に前後一日ズラしで連休を取ってらしたのでてっきりそういうことかと! 違いましたかね? おふたりのプライベート写真などファン垂涎のレアショットでは? どうして見せてくださらないんです?
HiMERU:(こいつを黙らせないとという顔)
燐音:(思わぬ事態に思考がショートした顔)
茨:おやおやおっや〜? あなた方隣同士に座っているのを良いことにテーブルの下でイチャイチャしてましたよね今? 脚を絡ませて遊んでましたね? ねえHiMERU氏〜?
HiMERU:(椅子を蹴倒して立ち上がり向かいに座る茨の口を塞ごうとする)
茨:(HiMERUの手を躱しテーブルに押さえつける)
HiMERU:痛った!
茨:あっはっは! 遅い!
HiMERU:どういうつもりだ! あんたどういうつもりだ!
燐音:あ⁉ え、メール? 山梨県にお住まいのラジオネーム「労働! 残業! 過労!」サンあんがとネ!
「燐音くんHiMERUくん茨くんこんばんは」
こんばんは!
「いつも楽しくラジオ聞いてます。今日は大好きな茨くんがゲストと聞いて本当に楽しみにしていました。茨くんに質問です。私は仕事中眠くなってしまうのが悩みです。一昨日も朝礼中に船を漕いで叱られました。茨くんはアイドルも経営もこなしているのにいつでもお目めぱっちりですごいです。疲れに負けない秘訣を教えてください」 
HiMERU:……
茨:……
燐音:……聞く相手が間違ってるっしょ! ちゃんと飯食って寝てくれよ〜⁉ それではここで一曲、『Eden』で『THE GENESIS』!

(楽曲IN)



 Bluetoothのイヤホンを片耳ずつ使ってラジオを聞いていたニキとこはくは、恐る恐る互いの顔を窺い見た。
「こはくちゃんひっどい顔」
「ひとんこと言うとる場合か」
「なはは……」
「なにわろてんねん」
「スンマセン」
 事実、笑ってる場合ではない。既にSNS上は「#クレビANP」「#CANP」といったハッシュタグが席巻している。これは火消しが大変そうだ。
「こりゃ大火事やな」
「っすねえ……」
 生放送、怖。というか副所長怖。疲労困憊で寝惚けて口を滑らせた風に仕立てたいのだろうが、彼をよく知る自分達には狙って仕掛けたのだということがわかってしまう。
「ったくもお、炎上商法も大概にせえよっち言いたいとこやけど……今回ばかしはあのひとらも油断しはったな」
「燐音くんとHiMERUくんの回、いつぶり? 半年ぶりくらいっすもんねたぶん。浮かれてたっす」
  これでは誰に腹を立てて良いのかわからない。いつもはワンコーラスで番組に戻るはずの楽曲が丸々一曲流れているあたり、この裏で壮絶なあれやこれやが繰り広げられていることは想像に難くない。次から『THE GENESIS』を聞く度に今回のことを思い出してしまうではないか。
 明日は美味しいおでん作ってあげるから何とか頑張ってね、燐音くん、HiMERUくん。
 ニキがそんなことを考えている間に音楽は止み、軽快なBGMと共にトークが再開した。再び話し出した燐音はどういうわけかめちゃくちゃに息を乱していて、そこから先はHiMERUも茨も一切登場しない、紛うことなき放送事故回として語り継がれることとなる、伝説の夜であった。





(ワンライお題『隣/生放送』)

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