【新ゲです?】フランスパン一本

 ざくりと固めの皮に包丁を入れる。そのままザクザクと切り裂くと、中からふんわりとした白さが見えた。よしよし、うまくいった。
 そのまま端から端まで包丁を入れ、バタールを縦に半分に切込みを入れる。ちなみによく混同するがバゲットとバタールだが、バゲットのほうが細長く、バタールは太くて短い。
 食感はパリッとした皮とモチモチの中身なのがバゲットで、バタールは皮も柔らかくもっちりとした食感。まぁバタールの皮がパリッとしているところもあるので、店によって多少の差異はあるが、だいたいそんなところらしい。
 サンドイッチにするのはバタールのほうがサイズ的にもあってるだろう。バゲットで、というか、あまりカリカリの皮でやると口の中に入れた時に歯茎に刺さって痛い思いをすることがあるからな。
 で、今私が何を作ろうとしているのかというと、いわゆるカスクートだ。硬いパンで作るサンドイッチ。といえばわかりやすいだろうか。ただし、私が今作っているのは、店の展示物になってそうな巨大バタール一本丸ごと使ってのカスクートです。その全長たるや実に1メートル。太さは15センチ! 途中で我に返っちゃいけないレベルです。実はちょっと後悔しているが、気にしてはいけない。
 なんでそんなもの作っているのか? そんなの理由なんぞないのです! 作りたかったから作った。以上!


「馬鹿でし」
「わははははは、すげー!!!」
「これはまた」
「食べごたえはありそうだよね」
「一回やってみてぇよな!」

 イツメンでの迷宮攻略の食事のときに出した際の反応です。菊姫には冷たく言い捨てられ、レオには笑われ、お茶漬には引かれ、ペテロには半笑いでフォローを入れられた。笑顔で受け取ってくれた二垢が癒やしになろうとは。
 シンには円形のフランスパン――ブールで作った肉詰めサンドイッチをやろう。中をくり抜き、肉、パン、肉、パン、肉、パンという脅威の肉サンドイッチだ。十字に切り分けると白とピンクのボーダーが現れ、心の目が輝く。
 肉はローストビーフに生ハム、鹿肉の燻製と、層によって種類を変えたのでいろいろな味が楽しめるだろう。

「すげぇぇぇぇぇ!!! 一回は食べてみたいと思った肉オンリーサンドイッチ!!!」

 うん、それだけ喜んでもらえれば嬉しいというもの。ちなみに私やシンが持ってもそれなりの大きさなので、菊姫とレオが持つともうこう、食べ物に見えない。

「昔、なんかこういうジョーク武器あったよね」
「あったあった」

 お茶漬とペテロの会話。なるほど、既視感があったのはそのせいか。まぁなんだかんだいいながら誰も切り分けようとせず端から噛みついてる。

「ん!? 途中で味が変わった?」
「あぁ、流石に全部同じ味だと飽きるだろうと思って」
「まめだねぇ」

 他にもシンには肉がもりもりだっり、お茶漬けは味があっさりめだったりします。私は標準的。とりあえずこれを食べたら次の階層に挑戦しますか。

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