軍師天鬼、利土を描く(8)

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 あれから数日が過ぎたが、利吉が天鬼の私室に呼び出される日課は途切れる気配がなかった。

 気づけば板敷きの床に紙を広げ、灯明を囲んで膝を突き合わせるのが当たり前になっていた。机を挟んで向かい合っていた最初の頃の距離はとうになくなり、利吉の方も以前のように「私は山田利吉ではありませんので」とはぐらかすのをやめていた。
 理由は単純だ。天鬼の焼きもちは、どうやら利鬼に向いている。それが分かってしまえば気持ちをはぐらかす理由もない。利吉が山田利吉の心情を真面目に語れば語るほど、天鬼は面白くなさそうに眉根を寄せる。記憶を失う前の土井先生は決して見せなかった顔だ。それが可愛くて仕方がなく、利吉もたいがい浮かれていた。
「……利鬼」
 プロットを書き綴っている反古紙の端を指で押さえながら、天鬼が低く呼ぶ。
「はい、天鬼殿。今夜はどの場面でしょう?」
「先日の続きだ。土井半助の心情は固まった。山田利吉を縛らぬよう気づかぬふりをしていたが、他の者に取られるかもしれぬと思って初めて手放したくないと認める。問題はその次だ」
 天鬼は紙の余白を筆先で叩いた。
「土井半助が、ついに山田利吉へ手を伸ばしたとする」
「はい」
「話の流れとしては、今更惜しくなったことへの詫びと自嘲を挟む方が自然だ。すると山田利吉は土井半助が自分の気持ちに最初から気づいていて、ずっと知らぬふりをしていたと知るわけだろう」
「そうなりますね」
「では山田利吉はどう動く。怒って寝返るか」
「寝返……寝返りはしませんよ。山田利吉はそんな節操なしではないでしょう」
 そもそも誰に? というツッコミを飲み込んで、利吉は真面目に答える。
「では、どう思うのだ」
「どう、と言われましても……」
「長年の欺瞞だぞ」
「欺瞞とは人聞きが悪い」
「味方と思っていた相手にずっと手の内を読まれ、弄ばれていたようなものではないか」
「弄ばれてなどいません」
 利吉ははっきりと遮った。天鬼が驚いたように瞬きをする。利吉自身、自分でも驚くほどに素直に言葉が出てしまっていた。本人に向かって言うのだから気恥ずかしくないと言えば嘘になるが、こればかりは聞き捨てならなかった。
「……山田利吉という男はですね、土井半助のことを、ずっと昔から知っていたんですよ。それこそ背丈もまるで届かない子どもの頃から、兄のように慕っていた」
「兄……」
「ええ。頼りがいがあって、優しくて、いろいろなことを知っている自慢の兄です。けれど彼が忍術学園に行き、自分だけのものではなくなってしまって……いつの間にかその気持ちが違うものに変わってしまった」
 言葉は淀みなく滑り出していく。横顔に天鬼の視線を感じたが、利吉は目を合わせないままに床に広げられた紙の文字を見つめ続けた。
「……弟分として見られるのだって、嬉しかったんです。特別扱いされているようで、誇らしかった。でも、同じくらい寂しくて」
「寂しい?」
「寂しいですよ。自分はもう子どもではないのに、一人の男として同じ高さで並び立ちたいのに、向こうはいつまでも自分を『可愛い弟分』の枠の中に置いてそこから出してくれない。どれだけ腕を磨いても、どれだけ背を伸ばしても、あの人の前ではいつまでもどこか庇護される子供のままで。……それが、どれほど歯痒くて、苦しかったか」
 言っているうちに、少し昔を思い出した。利吉は自嘲気味に口元を緩めた。
「だから、もし土井半助が自分のことを同じように想ってくれているのだと知ったら……たぶん、すぐには信じないと思います」
「何故だ」
「ずっと駄目だと思っていたからです。自分の気持ちは、相手にとって迷惑ではないにしても、応えてもらえるものではないと。それを長いこと当たり前にしていたなら、急に『実は向こうも好きだった』と言われても、すぐには頭が追いつかないでしょう」
「なるほど」
 天鬼は筆を走らせる。
「では、嬉しくないと」
「いえ」
 利吉は少し笑った。
「ものすごく嬉しいと思います」
 天鬼の筆が一瞬止まった。
「……ものすごく?」
「ええ。だって、ずっと欲しかったものですから」
 いつの間にか利吉は、本当に自分が経験したことのように言っていた。天鬼は筆を持ったまま動かない。利吉は少し目を細めて続ける。
「たぶん、山田利吉は土井半助に何かをしてもらいたくて好きだったわけではないと思うんです。ただ、好きだった。傍にいられればそれでいいと思って、相手が困るくらいなら言わない方がいいと決めていた。でも、本当は少しくらい期待していたでしょうし、もし同じ気持ちを返してもらえるなら……それはやっぱり、嬉しいですよ」
 天鬼は何も言わずに聞いていた。利吉は書き付けを見ながら、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「きっと最初は、どうして今まで言ってくれなかったんだ、とも思うでしょうね。気づいていたなら尚更です。自分だけずっと一人で悩んで、諦めようとして、それでも諦められなくて。なのに向こうも同じだったなんて、少しくらい腹も立つと思います」
「腹が立つのか」
「一瞬だけですよ。腹が立って、情けなくて、それでも──あの人が自分の欲のために手を伸ばしてくれたのなら、怒りなんてきっとどこかへ吹き飛んでしまいます。弟分としてではなく、一人の男として求められたのなら……それ以上望むものなんてありません」
 そこまで一気に言って、利吉は少し首を傾げて笑ってみせた。
「そしたら今度は、二度と離してやりませんよ。どんな手を使ってでも、自分の懐に囲い込んでみせます。山田利吉なら、そうすると思います」
「…………そうか」
 天鬼はそう言って、手元の紙に書き込んでいく。そこで利吉は我に返った。いくらなんでも喋りすぎた。山田利吉の心情を語るという体裁で、積年の想いを洗いざらい吐き出してしまった。しかも聞かせた相手は記憶がないとは言え当の本人である。利吉は誤魔化すように咳払いをして、膝の上の皺を手で払った。
「……ま、まあ、所詮は私の勝手な想像ですけれど。若い男というのは、だいたい独占欲が強いものでしょう」
 横目で様子を窺うと、天鬼はこれ以上ないほど不機嫌そうに眉間へ深い溝を作っていた。墨が跳ねそうな勢いで、天鬼は何かを書き殴っている。手首にもやけに力が入っている。
「天鬼殿」
「何だ」
「筆の穂先が割れますよ。力を入れすぎです」
「……軍略の記録には気迫が必要なのだ」
「これは軍略ではなく、物語の筋書きですが」
「敵の動向を先読みしてこちらの包囲網を敷くという意味では、立派な用兵術の一環だ。山田利吉の心理誘導、および土井半助の防衛戦術の破綻……辻褄は合うな」
 天鬼は強引に納得したように頷いて筆を置いた。紙の上には利吉の言葉が黒々とした筆跡で書き留められている。ところどころ軍事用語に置き換えられているが、中身はほとんどそのままだ。
「……よし。これで筋が通った」
「そうですか」
「土井半助が情に流されて陣を崩し、そこを山田利吉が一気に攻め落とす。双方の心理にも無理がない。女中の言っていたぷろっととやらは、これでひと通り形になった」
「ええ、実に見事な攻城戦ですね」
「うむ」
 天鬼は紙を几帳面に折り畳み、机の端の文箱へ収めた。
「夜も更けた。今夜はここまでとする。利鬼、もう下がってよい」
「承知いたしました。天鬼殿も、あまり夜更かしをなさいませんように」
「ああ」
 短く応えた天鬼に一礼して、利吉は廊下へ出た。戸を閉めると開け放たれた窓から入る夜気が火照った頬に心地よかった。
 土井先生を相手に、あそこまで自分の気持ちを語ったことは一度もない。そう思うと少し気恥ずかしい。けれども何だか本人に向けて想いを伝えられたかのようで、暗い廊下を歩き出す利吉の足取りはずいぶんと軽かった。


***


 利鬼の足音が聞こえなくなると、部屋はしんとした。
 天鬼は文箱の蓋を開け、先ほど収めた書き付けを取り出した。膝の上に広げ、端から読み返す。
 土井半助は、山田利吉を縛らぬために気持ちを隠していた。だが悋気により隠しきれなくなり、とうとう手を伸ばす。それを知った山田利吉は、長年知らぬふりをされていたことに一瞬腹を立てるが、それ以上に嬉しく、そして今度は自分の方から土井半助を離さない。
 守りを固めていた側が陣を崩し、攻められる側だった者が攻めに転じる。形勢の入れ替わりとしても申し分ない。
「うむ。上出来だ」
 天鬼は頷き、紙面を追った。中ほどに書き留めた利鬼の言葉に目が止まる。
 ──山田利吉は子どもの頃から、土井半助を兄のように慕っていた。
 ──弟分として接されるたびに嬉しく、同じくらい寂しかった。
 ──ひとりの男として並び立ちたかった。
 天鬼は眉を寄せた。
 語っていた時の利鬼の顔が浮かぶ。あれにいつもの軽口はなく、驚くほど真剣な目をしていた。語り終えたあとは照れを誤魔化すように笑っていた。
 利鬼は所詮は想像だと言っていたが、ただの想像でここまで具体的に語れるものだろうか。そもそも語るときの口調がもう違っていた。あれはおそらく山田利吉の話ではない。利鬼自身の話だ。
 ──ならば。
「……利鬼は、誰を思って言ったのだ」
 利鬼が天鬼の配下に入ってから、まだ日が浅い。子どもの頃の利鬼を天鬼は知らない。子どもの頃から兄のように慕っていた相手が自分であるはずがない。答えは一つしかなかった。
 ──あなたじゃありません。あなたによく似た人です。
 以前、利鬼ははっきりそう言っていたではないか。
 自分によく似た誰か。利鬼が一人の男として並び立ちたいと願い、手を伸ばされたら二度と離さないと言い切った相手はその男だ。
 天鬼の指から力が抜け、書き付けが膝の上へ落ちた。
 先日、利鬼に「私のことを好きだと仰っているように聞こえる」と言われた夜を思い出す。天鬼は顔を赤くした。利鬼の耳も赤くなっていた。だから天鬼は、利鬼の方も満更ではないのだろうと思っていたのだ。でも──あれも自分を見て赤くなったのではなかったのかもしれない。天鬼の顔に、よく似た男の顔を重ねていただけではないのだろうか。
 ふと気づくと、肩が落ちている。売れ残りの冊子を膝に積んで縁側に座っていた時と同じ格好だ。自分が落ち込んでいるのだと、天鬼はそこでようやく気づいた。
「……何を呆けている」
 天鬼は戒めるように膝を打った。
 軍師たる者が、私情で陣を乱してどうする。形勢が悪い時こそ手の打ちようを考えるのが兵法だ。
 迂を以て直と為し、患を以て利と為す。
 孫子の軍争篇である。遠回りを近道に変え、災いを利に変える。負け戦で負った傷も、どこがどう痛むのか分かれば次の戦の備えになる。
「そうだ。無駄にはならん」
 天鬼は書き付けを拾い上げた。
 この胸のもやつきは何だ。利鬼の気持ちは自分に向いていると思っていた。それが実は、別の男に向いていたのかもしれない。
 これは、プロットの土井半助と同じではないか。
 土井半助も、山田利吉の好意は自分に向いているものだと思っていた。だからこそ安心して知らぬふりができた。ところが山田利吉の心が別の誰かに移ったかもしれないと知って、初めて手放したくないと気づくのだ。であれば今の自分の胸の内こそ、その土井半助の心持ちである。
「……これは使えるな」
 天鬼は硯を引き寄せ、筆に墨を含ませた。新しい紙を広げ、土井半助の独白を書きつける。
 ──その眼差しは、私を見ているのか。
 ──笑いかけたいのは、本当は別の誰かではないのか。
 ──他の誰かに向くくらいなら、いっそ。
 筆が止まらない。これまで何日も唸っていた土井半助の心情が、面白いように言葉になる。
 書き終えて、天鬼は紙を灯明にかざして読み返した。
「……うむ」
 重々しく頷く。
「情緒がある」
 患を以て利と為すとはまさにこのこと。軍師としての面目躍如である。
 天鬼はその勢いのまま、残りの筋も書きつけた。山田利吉の心が離れたかと思った土井半助が、初めて手放したくないと気づき、手を伸ばす。知らぬふりをされていたと知った山田利吉は、今度は自分の方から土井半助を離さない。これまで紙の上に散らばっていた場面が、一本の筋につながった。
 最後の一行を書き終え、天鬼は筆を置いた。
 書き付けを揃えて、頭から終わりまで読み通す。どこにも穴はない。
「……よし」
 ぷろっとの完成である。
 明日、女中に見せに行こう。あの女のことだから、また分からない言葉を並べて何か言うのだろう。だが今度ばかりは、文句のつけようがあるまい。
 天鬼は書き付けを文箱に収めた。肩はもう落ちていなかった。
 軍略家は策を弄しているときが結局一番楽しいのである。


***


「……めっちゃいい」
 翌日の昼下がり、日当たりのいい縁側で、女中は雑巾を握ったまま呟いた。天鬼の持参した書き付けを食い入るように眺めている。
 天鬼は雑巾くらい置けと言いたかったが、おとなしく腕を組んで身構えていた。昨夜のうちにつけられそうな難癖への返答を三つ用意してある。土井半助の独白が長すぎると言われれば軍使の口上を引き、山田利吉の執着が唐突だと言われれば奇襲の伏線だと説く手筈だった。逆に出鼻をくじかれた気分である。
「……めっちゃ?」
「感情移入のレベルが異常に上がってます」
「れべる?」
「何ですかこの胸の締めつけられる感じは。解像度が跳ね上がってます」
「かいぞうど」
 また始まった。天鬼は眉をひそめた。
「斥候の目のことか」
「違います」
「遠方の敵陣を克明に見定める技の話ではないのか」
「まあ、見定めるという意味では遠くもないですが……」
 女中は紙から目を離さずに言った。
「人物の息遣いとか表情とか、そういう細部が目に見えるようだってことです。前のプロットは遠くから眺めた陣形図みたいでしたけど、これは肌の熱まで伝わってきます」
「肌の熱など書いた覚えはないが」
「比喩です」
「紛らわしいことを言うな」
「大事ですよメタファーは。お話作りをするのであれば特に」
 天鬼は鼻を鳴らした。三つの返答を使わずに済んだのは惜しい気もするが、認められたのならそれでいい。
「……では、これで兵を動かせるか」
「兵は動きませんが、読者の心は動きますね。山田利吉のこの台詞とか、すごく刺さります」
「……ささる?」
「心に刺さって抜けなくなるんです」
「矢か」
「はい。一本刺さったら、もう読むのをやめられません」
「なるほど。矢傷を負った兵が、抜くに抜けずに陣へ留まる」
「……まあ、大体そんな感じです」
 女中は説明を諦めた顔をした。
「ならば、山田利吉の動きに不備はないな」
「不備どころか解釈一致の極みです」
「かいしゃくいっち」
「心の底で見たかった利土の姿そのもの、ということです」
「つまり軍議で諸将の意見が一つにそろい、誰も異を唱えぬ状態か」
「近いですね」
「めったにないことだ」
「めったにないから尊いんです」
「とうとい?」
「こちらの話です。ショタ専の私ですら滾るくらいなので界隈の人にとってはもはや沼なのでは?」
「ぬま」
 天鬼の目がわずかに細くなる。
「泥田に誘い込んで足を取る策か」
「誘い込まれると言うか、自分から喜んで沈んでいくというか」
「敵が自ら泥田に飛び込むわけがなかろう」
「そこを飛び込むのが沼なので」
「正気とは思えんな」
「正気の人は二次創作に関わらないんです」
「そうなのか……?」
「そういうものです」
 女中はきっぱりと言い切った。
 天鬼は少し考えた。正気を失った者に、自ら飛び込ませる罠を張る。相手の判断を奪い、こちらの意のままに動かす。──詭道である。悪くない。
 女中は紙をめくり、昨夜天鬼が最後に書き足したところを指で追った。土井半助の独白である。
「その眼差しは、私を見ているのか」
 女中は声に出して読んだ。
「笑いかけたいのは、別の誰かではないのか。他の誰かに向くくらいなら、いっそ──」
 読み終えて、女中は顔を上げた。
「天鬼様」
「何だ」
「急にこんな真に迫った心理が書けるなんて、何かありましたか?」
 天鬼はわずかに視線を逸らし、縁側の木目を見た。袖の中で、指先が小さく握り込まれる。
「……別に、何もない」
「いや嘘」
「嘘ではない。利鬼から話を聞いただけだ」
「利鬼様から?」
「利鬼には、子供の頃から慕っている男がいるらしい」
 天鬼は淡々と続けた。
「私によく似た男だそうだ。その男に弟分のように扱われるのが、嬉しくもあり寂しくもあったと。もしも相手から手を伸ばされたら今度は自分から離さないと、そう語っていた」
「…………」
「あれは山田利吉の話ではない。利鬼自身の本心だ。配下に入って日の浅い私ではなく、その男に向けたものだ」
 そこまで言って、天鬼は口を閉じた。自分でも驚くほど平坦な声だった。
「……なるほど」
 女中が小さく呟いた。
「それを聞いた時の胸のもやつきを、土井半助の嫉妬に使った。患を以て利と為す。作劇上の研究だ」
 それ以上でも以下でもない、というふうに伝えると、女中が何とも言えない顔で天鬼を見ていた。眉を下げ、唇をきつく引き結んでいる。言いたいことを腹の底に無理やり押し戻しているような顔だった。
「……何だ。その顔は」
「いえ」
 女中は一度目を伏せ、それから天鬼を見た。
「私からは何も。私は約束を守る女なので」
「誰との約束だ」
「こちらの話です」
「またそれか」
 女中は書き付けを丁寧に揃え、両手で天鬼に差し出した。
「天鬼様」
「何だ」
「山田利吉の長年の想いも、土井半助の独占欲も、両方救われるなら何よりです。読者はハピエンが大好きですから」
「はぴえんとやらは分からんが、軍略の筋としては通っている」
「はいはい、軍略軍略」
 女中は雑巾を置いて、ぱんと両手を叩いた。
「プロットはこれで文句なしです。どうぞ書き進めてください」
「うむ」
「では次はネームですね」
「……ねえむ?」
 天鬼は身構えた。また知らない言葉だ。
「兵糧の算段か」
「違います」
「陣の割り振りか」
「割るという意味では近いです。紙の上をコマに割って、絵と台詞を大まかに配置する作業です」
「──なるほど」
 天鬼は合点がいったように深く頷いた。
「攻める前に、どこに足軽を置くか決める布陣図だな」
「まあ……大体そんな感じです」
 女中はもう、突っ込む気もないようだった。




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