陵の字、稜に改む。


*刀ステ虚伝のセリフを踏まえています
*墓から暴かれたミササギ丸よりもやっぱり鶴丸には「鶴丸」が似合う


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 三つの山の稜線が人の横顔に見える。縁側に座る鶴丸はひらめいてしまった。だったら右の山々が胴体だな、するとあっちが足になって…。遠くを眺めるのが好きな鶴丸は一人遊びが得意でもあった。
 巨人の輪郭を描く目線が山の八つ目にさしかかろうというところで、ふと、背景の青が目に入る。

(…俺も山ほどに大きければ、身を起こすだけで首を突っ込めるんだが……)

 天を驚かせたい───己が切っ先で空を突きながら、かつて仲間に言ったことがあった。でもどうすればいいのかはとんと見当がついていない。我ながら口上だけは立派だったよなあと、おかしくなって笑う。鶴丸にかかれば己すらも眺めて楽しむ対象というわけだ。
 しかしながら、鶴丸は天を恨んでいるわけではない。まあ恨むほど非道い目には遭っていないしなと、これまた冷淡にも己が来歴を俯瞰していた。むしろこうして人の身を得る “幸運” に恵まれたのだ。つまらなかった事を差し引いたって釣りが来るだろう─────

 としても、だ。
 “復讐” する気はなかろうと、ぶつけたい文句は山ほどある。そんでもって俺ってやつは、文句は直接言いたい質だ。そう、太刀だけに。はっはっは!!

 ………天に耳がついていたら気温が急激に下がっていたに違いない。ついていなかったようで良かっ… いや、ついてねえと文句を聞かせられないか…? んん…?
 鶴丸の傍らには半分ほどになった、審神者特製ばくだんおにぎり(大)(唐揚げ蜂蜜梅干し昆布おかか明太マヨ入り)。昼食による満腹感がまさしく今、睡魔を連れて来ていた。
 鶴丸はついに堪え切れなくなり、ばたん、仰向けに寝転がる。
 三つの山の稜線が、綺麗にその横顔に重なった。



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