2024/03/30 06.EARL GREY

 本日は顔見知りのところに顔出しに行こう。と決めてまず初めにアルのところに来ました。

「やぁ」
「いらっしゃい」

 声をかけて奥の部屋に招かれる。本日のお茶は香りのいいアールグレイ。ベルガモットの落ち着きある芳香が大きな特徴だな。茶請けはさっくり、しっとりとした歯触りに仕上がったマカロンだ。味はシトロン、オレンジ、チョコ、バニラの四種類。
 ところでアールグレイはイギリスのグレイ伯爵が関わっているという説があり、異世界だとどうなってるんだろうと思ったら、普通にアイルのグレイ伯爵が関わってました。現在も流通にかかわっているらしい。私としては美味しく飲めれば問題ありませんよ。

「いい香りだね」
「ありがとう」
「こっちも美味しい」
「あぁ、受付嬢たちへの土産もあるから」

 賄賂と言うなら言えばいい。心付け大事。ちなみにレンガードのお菓子を差し入れたら、という奴はいつの間にかデート相手が受付嬢ではなく副ギルド長になっていた。なんでだ? 男女均等かなにかなんだろうか?

「最近は何をしているんだい?」
「エルフの大陸に行く準備だな。仲間がまだ条件を達成してないので、その手伝いとかだ」
「エルフの……」
「あぁ、毒の鳥シレーネがいるそうだし、楽しみだ」

 フクロウとか、シマエナガとかみたいなもふっとした鳥だといいな。と私が言うと、アルは何とも言えない顔で首を振る。あーそう言えば、封印の獣は各国やギルドで秘匿していたり、失伝していたりするんだったか?

「あー」
「どこで聞いたか気になるけど、教えなくていいから」

 アッ、ハイ。やはり取り扱い注意情報なんだろうか。プレイヤー同士間だと謎に触れる関係であまり話せないのだが、住人相手だとどこまで話していいかわからん。アルの場合はここから情報が広がるから制限がかかってるのかもしれない。とは、メタ思考。
 一応信頼はしているが、アルからこちらに情報を持っていることが伝わっても面倒だし、聞かないでくれたのはありがたいのだろう。マカロン追加でどうぞ。

「帝国で鵺と玉藻という二つの封印の獣が戦争に関わっていたこともあって、どの国の上層部もぴりついている。十分気をつけなよ」

 すいません、その獣、我が家に五匹、いや、二人と三匹おります。というのは今度こそ黙っておこうと思う私だった。

「話は変わるが、アイルのグレイ伯爵について分かることはあるか?」
「紅茶の? そう言えばこれも」
「あぁ、これは私が香り付けをした者なんだ。この世界のものも気になるからな」

 そう言えば。という顔をするアルに伝える。問屋の爺さんにも効いてみる予定だが、商売人とアルとだと違う情報がありそうだしな。

「どうだねぇ、ちょっと待って」

 アルはそう言ってカップを置くと本を探し始めた。

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