2024/05/23 キス
手の上なら尊敬のキス
額の上なら友情のキス
頬の上なら満足感のキス
唇の上なら愛情のキス
閉じた目の上なら憧憬のキス
掌の上なら懇願のキス
腕と首なら欲望のキス
さてそのほかは、みな狂気の沙汰
――フランツ・グリルパルツァー『接吻』
雑貨屋に行き、お茶をしていると午前中の仕事を終えたらしいラピスとノエル。それにカルが上に上がってきた。
「主」
「主!」
ソファに座っていた私のところにニコニコと二人がやってきて、両脇に座る。まるい頬がバラ色だ。初めてあった頃はガリガリで、薄汚れていても青ざめるように白かったのがわかったのでよくぞここまで育ったなぁ。と、少しばかり感慨深い。
よすよすと、頭を撫でる。すると両方の耳が撫でやすいようにか左右に伏せた。かわいい。耳をもしゃもしゃしたいのをぐっとこらえます。
「主」
「どうした?」
「お手を」
カルが床に膝をつく。え、何が始まるんです? と、戸惑いながらカルの青い瞳に真摯に見つめられて手を差し出す。
すると|恭《うやうや》しく私の手を取ったカルは、手の甲にそっと唇を落とした。いつもの生活感のある雑貨屋のリビングでなければ、という化されているのが私でなければ絵画の題材にされそうなほど優美だった。うん、でも、されているのは私なんだよなぁ。
「ありがとうございます。主」
すっと、身体を起こしたカルがほほ笑む。いや、手を離してください? と、言おうとしたら左右に座っていたラピスとノエルが「僕も」「ラピスも!」と言って私の両の頬に勢いよくキスをしてきた。
勢いが良すぎてキスというか、顔をぶつかってきたって感じだけど。そして分かったぞ、これ何かのイベントだな? えへへへと、離れて照れたように笑う二人の頭を撫でながらそっとウィンドウを開いてイベントを確認する。
キスの日のミニイベント!
好感度の高い住人からキスを貰おう! 好感の種類によってキスをする場所が違うぞ!
お返しにキスをするとさらに好感度アップ!!
手の上なら尊敬のキス
額の上なら友情のキス
頬の上なら満足感のキス
唇の上なら愛情のキス
閉じた目の上なら憧憬のキス
掌の上なら懇願のキス
腕と首なら欲望のキス
※無理やりプレイヤーからすると好感度が下がる可能性があります。
……運営にしては珍しい気がしますね? キスの種類は確かオーストリアの作家か何かだったか? とりあえずソワソワワクワクしている二人にはそれぞれ頬に軽く唇を落とし、カルは友情なら額だが、騎士の誓いのキスがなんとなく思い出してしまうので、目を閉じてもらって瞼の上に。カルのかっこよさに憧れるというのなら間違っていない。
そのあとそれぞれガラハド達にも頬にキスをされ、カミラには額の上、それ以外にはやはり瞼の上に。それぞれ違いはあれどかっこいいぞ。レーノも同じく。マーリンは好感度が足りなかった模様。
一通りキスをして、これ以上揶揄われるのも嫌だったのでクランハウスへと移動する。プレイヤー同士ならおかしなことにはならないだろうしな。イベント中は出歩きませんよ!!
-----
カルホムなら夜に家に行ったら……とかあるだろうし、ペテホムならペテロの庭で全身噛みつく勢いでされそうだなw
powered by 小説執筆ツール「notes」
78 回読まれています