ホットチョコレート

周りが少し浮かれだす日が近くなった。カップルや友達同士で約束をしている。かくゆう私も、お友達とはチョコレートを交換する約束をしていた。
そう、季節はバレンタインへと近づいていた。
私は、今年こそ大好きで愛していて、天使だと思っている大切な女性へ友チョコでもいいからあげたかった。
少しは大人ぶろうと地下にあるバレンタインフェアであの子に似合うチョコレートを選んでいた。あるときに目に付いた、綺麗なお花のチョコレートを見つけた。
色々な種類があったが、私は迷わずに向日葵のチョコレートが入った黄色い可愛いBOXを手に入れた。
私にしては少し背伸びをしたお値段のもの、他にも何かあげたくなって、近くにあったハンドクリームを専門的に扱っているお店で、自分が大好き匂いのハンドクリームを買った。季節的にも乾燥が増えてきているから丁度いいだろうとホクホクした思いだった。
最後に自分用になんて言って、近くにあった薔薇のパッケージが可愛いチョコレートを手に取る。自分用だからなんて言っていたが本当はチョコレート自体美味しくなかったらどうしようなんて緊張していた。
チョコレートを持って帰って、アオイちゃんのものは丁寧に冷蔵庫へと入れる。ハンドクリームは一番きれいなところに飾っておいておいた。これとチョコレートをと考えるだけで緊張とは違う別の何かがあった。
多分、受け取ってもらえるのかって不安になっていたんだと思う。チョコレートももしかしたらなんて考え込んでいたので、買ってきたものを早速食べることにした。
味は普通どころか、私としてはとっても好きなものだった。甘いチョコレート、特に、ミルクものが大好きな自分としては大大大満足で少しだけ不安が消し去って至ったような気がした。

バレンタイン当日はドキドキが止まらなかった。友達に用意した友チョコは早々に渡し終えて。知り合いや、ゼミの先輩にはチロルチョコを数個配り歩いていた。本命には緊張して渡せていなかった。
私の大好きな女性、アオイちゃんは皆に手作りのクッキー入りの袋を渡していて、私も欲しいと眺めるだけだった。それでも、これだけでも受け取って欲しいと、そう考えて、アオイちゃんを探すことにした。
アオイちゃんがどこにいるのは他の人に聞くと少し嫌そうな顔をしながら
「あの冴えない彼氏のところ」「なんであんなのと付き合ってるんだろ」
なんて言葉を吐いていた。
私はアオイちゃんは優しいなぁって思っていた。あんな奴にも用意してるんだ。まぁ、一応彼氏だもんね。
どうせ、すぐ終わると考えて、教えもらった場所へと急いだ。目的地に近づけばどんどんアオイちゃんの美しい髪が風に靡いてこちらに見える。
アオイちゃんと声をかけそうになって声が出なかった。アオイちゃんは見たこともない嬉しいそうな恥ずかしそうな、真っ赤な顔で、他の人に配っていた袋とは違う、紙袋を持って彼氏と立っていた。
その時鈍器に殴られたような気分だった。彼氏は特別なの??なんで???そんな言葉が浮かんでは消えていく。あんなやつの何処がいいのか私には理解できない。
アオイちゃんとその彼氏は何か話し終わったのか二人で去っていく。その時にアオイちゃんに声をかけることはできなかった。
私は今の光景が信じたくなかった。だけど、一つの確信を思いついてしまった。そうかアオイちゃんってガチなんだ。だって、彼氏の事だけ名前で呼ぶっていう特別扱いしてるし。本命チョコだって渡してて、他の人にはしないあんな真っ赤な顔で。
怒りよりも先に、絶望が心を染め上げていく。私じゃ駄目なのなんてきっと見当違いだ。あの彼氏じゃなきゃあのアオイちゃんは見れない。私なんかじゃあんな顔させれない。せいぜい愛想笑いで笑ってるアオイちゃんを見て笑ってくれたって勘違いするだけだ。そう思えて涙が止まらなかった。
2時間くらいそこで放心して、泣いて、崩れ落ちそうだったと思う。友達が心配してきてくれてようやく動けた。その時にはアオイちゃんへの思いは無だった。何も考えてたくなくて、ただ無で終わった。
そんな苦しいことがあって、家ではチョコレートをどうしよって、それだけを考えるようにしていた。
箱を開ければ少し溶けかけているチョコレート。冬の寒さよりも暑かったのだろうか。そんなくださらないことを考えていた。
溶けたチョコレートを処分しようかと考えていたときに、まるで、私のように見えた。不必要なものを抱えてわ、それを砕いて溶かされた私のように。
だから、飲み物にすることにした。バリバリに砕いて、溶かし、ミルクでも入れて、そうやってできたものを無理やり飲み干した。
前に食べたときのような美味しさなんてものは何一つもなくて、苦くて苦しいものだった。前はあんなにも甘くて美味しいものだった筈なのに。
この味が私の心なのか、それとも色々なものを混ぜた結果なのか分からなかったけれど、頬から溢れたものをとめるすべはもう何もなかった。

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