小さな執行人ボツ集1

「小さな執行人」のあとがきでもちらっと言っていたボツシーン。

①は物語を書き始めた初期の文章。
初期はシルヴァンが過去の日記を読み漁って回想するという設定だったので、その時のもの。
ちなみに物語の冒頭となるはずのものだった。この日記を開いたら過去の自分がこの物語の主役となる、といった感じにしたかった…

でもこの設定は後になってイマイチしっくりこなかったのでボツ。


②も序盤のあたりに入れようと思っていたもの。
正直こんなの書いたっけ?という気持ち。

─────────────────────────────────



眠れない夜はいつも物思いにふけてしまう。今宵も未だ目が冴えている状態が続いている。
私にはこんな時だけの密かな趣味があった。
 それは、昔書き記した日誌を読み漁るというものだ。もちろんそれは楽しい思い出ばかりではないのだが、私にとってこの行動は自分の運命に向き合うにはちょうどいいのだ。
 困難の壁に当たってしまった時、自分を見失いそうになった時、そういう時の支えになるのが過去の日誌だった。
 本棚に綺麗に並べられた数多のノートたち。これは私が今まで書いてきた日誌、記録帳のようなものである。我ながら、よくここまで書き溜めたと感心している。
 何故日誌を書くようになったのかというと、この死刑執行人という役職の存在を忘れてはならないと思ったからである。そしていつの間にか日誌をつける習慣ができた。
 手元に置いてあるランプの明るさだけを頼りに、並べられたノートの中から適当なものを選んで取り出した。
 長い間本棚の中で眠っていたため、ノートは色あせている。それがまた心地よく感じる。いつか再び手にとってもらうまで待っていたに違いない。
 表紙をめくるとはじめのページには「死刑執行人という役職について」と記載してあった。それを見てこのノートの内容は確か十五歳くらいの時に書いたものだ、とすぐに思い出した。ちなみに現在はこれを書いてから少なくとも十年は経過している。時の流れは早いものだ。
 過去の私が書いたものだが、まるで初めて読むかのような感覚に陥った。
 日誌を読む時の私はその当時の私として蘇り、主役となる。


─────────────────────────────────



 物心がついた時にはすでに日記を書いていた記憶がある。だがそれは拙く、何を伝えたかったのかさえわからない。だがその当時からおそらく一瞬の日常を大切にしていたのだろう。
 成人した後、私は死刑執行人の代理人として処刑台の上に立つことになるのだが、その時から詳細な記録を残しておこうと再び日記を書き始めた。
 日常の些細なことだけでなく、刑罰の記録や社会情勢、人間関係などを細かく記録した。

powered by 小説執筆ツール「notes」

48 回読まれています