ひかり

 最初、光を見たと思った。
 オ・デヨンは年功序列の縛りの厳しいこの国でスヒョンが年下の上司になることも、共に働くことにもさほど嫌な顔をしなかった。それどころかスヒョンの話を聞こうとした。これは嬉しい予想外で、スヒョンはデヨンといると息をするのが楽だった。
 オ・デヨンが優秀だというのは事実で。必要なことを必要な時に、ときにはそのコミュニケーション能力を駆使して、ときには経験を存分に生かして事件解決の糸口をつかむ。
 近くにいても煩わしくない、会話がスムーズに運ぶ。スヒョンが動きやすいようにサポートしてくれて、笑いかけてくれる。
 
 ──どうして僕を信じられないんですか、と口から出た言葉は紛れもない本心で。自分はオ・デヨンに信じてほしかったのだと気づいてしまった。

 失ったものの温度を、知ってほしかったわけじゃない。孤独な闘いだったな、と心を寄せてくれただけで十分だった。笑顔が似合う。人に好かれる人で、朗らかで、伴侶を大切にしていて。そういう姿を見ていたかったのに。

 いつの間にか恋をした。叶わぬ恋。叶えてはいけない恋。叶えるつもりのない恋だ。
 その感情を抱えたまま生きていく、とスヒョンは決めていて。

 決めていたのに、ああ、どうして。大切な人の愛するものが失われているのか。どうしてこの腕は守れなかったのか。

 光を見た。その光に手が届いてはいけなかったのに。
 


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