2024/03/26 03.KEEMUN QUEEN'S HOPE(モブ視点)
俺はしがない行商人だ。街で仕入れたものを村から村に渡り歩いて売り払い、帰りにはその村で購入したものを町に持ち帰ることもある。そんなことをもう何年も繰り返している。
最近はどうにも魔物の数が増えてきている気がする。ただジーアスの方で物語の中にしか登場しないと言われていた異邦人が大量に現れたって話もあるから、何かあるのかもしんねぇ。
まぁおらたちにしてみればそこまで影響がある話でもねぇ。
そんなある日、おいらがいつものように歩いていると奇妙なものを見つけた。いや、奇妙なもんというのもおかしいか。少なくとも一つ一つは見知ったんだった。
「……あんた、冒険者か?」
「いかにも」
思わず問いかけてしまったのは、そいつが木製テーブルにおなじく木製のイスに座って優雅にお茶を飲んでいたからなんだ。木製ったって、その辺の板や棒っきれを適当に組み合わせたもんじゃねぇ。しっかり職人が作ったやつだ。
そこそこ広めのリビングに置かれるにふさわしい作りで、間違いなくふきっ晒しの野外に置かれるもんじゃねぇだろう。
だがそいつはそんなテーブルについて、何を聞いてるんだ? みたいな顔で頷いたんだ。
おらはなるほど、こいつは冒険者なのかと改めてみると、たしかに魔法使いのローブのような服装をしていた。真っ白い長い髪が実のところちょっと不気味だったんだが、突然襲ってくるようには見えなかった。
「こんなところで茶を喫している冒険者は初めて見た」
「あぁ、確かに。少し疲れてな。あなたもどうだ?」
白い男はさらりとそう言った。トカイのナンパ|じつ《・・》っていうのか? 実にスマートかつエレ……エレファント? な感じだった。
そこで出された紅茶がそりゃもう、めちゃくちゃ美味かったんだわ。花みたいないい匂いがして、ちっとも渋くねぇのさ! 思わず「こりゃうめぇ」って叫んだら、兄ちゃん――あぁ、いまさらだがそいつは若い、そりゃもう別嬪な兄ちゃんだった。異邦人ってのはみんな美形らしいが、その兄ちゃんとどっちが美形なんかね?
いやそうじゃなく、ともかくおらが叫ぶとその兄ちゃんが「それはよかった」ってふわっと笑いおったんだ。あれは男でも見ほれるな。いや、もう男と女とか関係ねぇ。それくらい綺麗な笑みだった。なんだ? 俺に似合わねぇ。うるせぇな、それくらいわかってるよ!
ともかく、この世のものとは思えねぇ紅茶を頂いた俺は、陽もくれるってんでそこで兄ちゃんとは別れた。なんとなく名残惜しくて振り返った時にはすでにテーブルも椅子も消えて、兄ちゃんもいなくなっちまってた。
あれはもしかすると精霊とかの類だったのかもしれねぇなぁ。
というわけで、一度飲んだ紅茶の味が忘れられずに、あちこちで茶葉を集め「これは」ってのを探し求めたおいら渾身の茶葉たちだ。おひとつどうだい!?
「って、茶葉売りがいるらしいんだけど、もしかしなくてもホムラだよね?」
「心当たりはあるが、別に消えたわけじゃなく、【気配希釈】を掛けただけなんだがなぁ……」
ちなみに最高級の茶葉は蘭に似た香りがするもので名前を『麗しき白の君』というらしい。
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のちにカルさんが買ってきちゃうかもしれんw
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