待つ

残雪の寒冷地にある村の一角。周囲に溶け込む丸太づくりの、さりとて立派な建物の中に、何かを待つ人がひとり居た。狩人のモミジだ。部屋全体を暖めんとする大きな暖炉が、彼女を後ろから優しく照らす。炎の橙を受ける柔らかな白銀の長髪は、金糸のようにも見えた。

素朴な丸太のスツールに腰掛けている彼女の膝の上には、いつもの手袋が置かれている。彼女の仕事の相棒のひとつだ。彼女は、はずしたそれを、食卓の上に置くこともしなければ、ぞんざいに扱うこともしないようだ。

「あち、あち」

なにか温かい飲み物の注がれたマグカップを、そっと包む指先が、ほんのりと赤みを帯びている。膝の上の手袋がものを言うことはない。ただ、暖炉だけが、彼女が気まぐれに揺らした足先と同じリズムで、機嫌良さそうにパチリと音を立てた。

彼女が何を待っているのかは定かではない。同じ狩人の鴉鶴《あかく》やゲンジと、いつもの仕事に赴くのかもしれない。事務手続き中の待ち時間なのかもしれないし、もう仕事の後で、帰路につく前に少しゆっくりしているのかもしれない。

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