短歌まとめ

2024/03/22 更新

おはようの練習してる一番に見せに行くから楽しみにして
またたいて見えたあの日より強くぼくの手をひくきみのひとみが
息を止め駆け出したのは夕暮れの底なしの黒溺れぬために
触れようとしてぶつかって笑ってた ほんとうごめん上手じゃなくて
話しててろくに時間も見てなくて 年越しをしたあとに飛んでた
五年後もミスドのパイがぼろぼろと落ちるはなしをしてたらいいね

気に入ったプレイリストを教えて、交換しよう 春が来るから
iTunes新しくいれた君の名で自動生成された音楽
流れてる多分何かのクラシック 古典の愛、祈りを惰性で
せいぜいが3分間の診察の だけどないと生きていけない
すこししか離れていないはずの駅 知らない言葉ばかり行き交う
A4のクリアファイルがそれだけでここにも暮らしを想像できる

識別もできぬ速さで流れてく広告写真を撮るひともいる
お昼時案内されたテーブルの売り切れたきみが一番欲しい
毎日がなぜかどうにも慣れなくて 別生物の可能性ある
206きみのなかにもあるんだと思えば 骨もすこしいとしい
食べかけのケーキがつくる台形は別れを惜しむモチーフみたい
「滅亡だ」流れる雲が速いのを眺めていたら浮かんだ予感

積み本で可視化されてるなにがしを、反省しつつまた重ねてる
いままでを振り返るのにフォルダーを開いたけれどなにもわからん
片付いた床に寝転び伸びをするその特権のために片付け
ひとかけら投げ込みあとはまわりだす 創世に似た音を聞いてる
目の前の君に言えないもの溶かし、ひとくちふくみ舌で転がし
「もし君と同じ地獄を歩けたら?」
「例え話にしたってお前……」

喉の奥うまく呼べずに飲み込んだきみの名前がやたらと苦い
ブラインド越しのひかりが気づかせる祈りに似せただけの片恋
身につけるものばかりふえる人生であなたもいつかわたしを飾る
清算のつもりで置いたインテリア 過去なら恋もかわいいからね
何回もたたんで折っていたあれは手渡すまえの覚悟の時間
まぁ別にきみなら見てもいいけれど、なんて嘘だよ、どう驚いた?
うちがわを見たくて触れたゆびさきの温度がやけにもどかしい夏

本当じゃなくてもいいよ 触れてみる思い込みでも愛と呼べれば
やわらかな祈りに似てるゆびさきが生命線をなぞる夜です
一瞬でいいのわたしが真ん中に、ほかの全てを捨てたっていい
生白いプラスチックに誓い合う いつか白銀の指輪を買うよ
こじつけでおれの所為だと言いがかり もっとやさしく誘ってくれよ

ラブレター最後だからさ受け取って 言い逃げだよな 返事はいいよ
切手でもあればよかった華奢の国までお前を連れて
瞬いた星が隠れて彼だけがまだ気づかないあざやかな青
つるつるの安いコート紙ぼやけてた鉛筆の黒 だけど確かに
柔らかな絹に溺れているようだ ままならなくて優しい嘘は
変わらない、口に出してもゆめ見ても それでも足掻きたかったほんとは

目の前が霞むくらいの眩しさを光を熱を受け止める場所
いつからか覚えた言葉いつの日か言わなくてよくなる日が来るか
ありがとう今はいいんだ将来のこともなんにもわかんないもの
カーテンの向こうくらいに見えなくてそのくせ近いそういう距離だ
黙ってる 手を伸ばすのは怖いから 何も知らないそれじゃだめかな
ゆるされる合図がほしい そうしたら全部捨てても構わないのに
おれだって普段のおまえを知らないがおれだけが知るおまえならいる

助けてと言われたらすぐ頷いた助けようとはしなかったのに
間が悪い時に限って素直だな 言ってやったら怒るだろうか
なだらかな頬の輪郭をみていた 触れてみたいと触れる距離で
ほんとうは君だけに手を伸ばせたらどれだけ楽か考えていた
天秤に世界と君をかけたときそのまま止まるくらいにはすき

聞いていた話とちがうからきっと恋じゃあないよ勘違いだよ
いたずらに笑って好きだなどというお前がひどく憎たらしいよ
立ち止まり手を離すんだそうしたらどのあたりだろ君が気づくの
そうやって全部頼っておれのこと必要としてそばにいさせて
こんなのに振り回される暇はないそう思うのに棄てられないや

ぼくいつかきみにゆるして欲しくって、同じくらいにゆるされたくない
ずけずけと入り込んでは踏み荒らし俺ばっかりがおまえのもので
優しいと言われるたびに内側のきたないものがむねを侵して
朝7時ニュースの中の死を見てる ぼくが死んだらきみはどうする?
好きだから許せはしないこともある 自傷みたいに笑うこことか

きみのこと知らないこともそのままに受け入れられる日は来るのかな
いつかまた話せる時も来るよほら そう言ってまた聞かないでいた
おかしいねきっと似てるよ僕たちさ 同じ目をして執着と恋
優しげなその目が嫌だ俺ばかり甘えてる気にさせられるから
品物を眺めて君の笑う顔考えるのを愛と呼べるか

まっさらな夜だったから君の手も初めて触れる心地でなぞる
くちびるの薄さにひどく驚いて、また確かめて、そんな言い訳
「生きてる」と思わず口について出て「殺さないでよ」そう笑われて
笑うのか泣けばいいのか怒るのかわかんないから抱きついている
このままで、おれのかたちも失って、おまえも連れて逃げちゃいたいよ

あんまりね知らないんだよ君のこと それでも好きで嫌になるよね
あのときに差し伸べられた手のひらの熱さがずっと俺を焼いてる
お前の目、好きだよ 言ったりしないけど、ずっと思ってた言えばよかった
間違えた?もう手遅れだ気づいても あるわけないと笑ってたのに
起きなくていいよ今日はねこのままで 隣にいてよゆめじゃないって

喉奥の熱さを恋と呼べるならいまから君と僕は生まれる
「攫ってもいいかな今から」そんな顔しながら聞くな頷きそうだ
一枚の葉があるだけでどのくらい意味が変わるか君は知ってる?
手にできる全てを抱いて駆け出した 誰かに認めて欲しかったんだ
これからをください、泣いてそう言った これまでだってくれてやるのに
時間でも、からだでもいいなんだって、何を渡せば僕見てくれる?

地図帳の知らない国を眺めてた世界の広さがピンと来なくて
誕生日覚えてますか父さんは、わたしはとうに忘れましたが
あの家の廊下から庭見えるとこ気に入っていた あと全部嫌
またたいたひかりを星と呼んでみる バックランプでも信号機でも
世界から出てくつもりでドアに鍵、贅沢に夜 わたしの為の
寝る前に思いついたの告白の言葉を だから会いにきました
花びらが内側に貼り付いたかと 思うほど胸にはつ恋を知る

こういうの、良くないんじゃと思うけど、おまえがそれでいいならいいよ
いとしさは何にも勝る猛毒で 僕じゃなくなる 世界は変わる
髪を切る 眼鏡を外す 少しずつあなたのためのわたしが出来る
端っこが覗いて見えたiPhoneのケースカバーのひびに似ている

あるんだよ栞も別に どの本に挟んでいたか忘れただけで
少しずつ読むとどこまで読んだのか忘れるからと溜めて積んでる
先生に朝の読書の時間だけ見逃されてた少年ジャンプ
背表紙をなぞる本棚順番に これはあの子が活躍してた
表題のおまけみたいに載っていたあの話だけ覚えてるんだ
ぼろぼろのもう出ていない児童書をもっと大事に読めばよかった
ファリーンに兄がいるんだ原作は でもよかったよカットされてて

入浴は優しくはない世界からたったひとりに戻る儀式だ
ひさしぶり元気そうだね良かったよ 乾杯しよう何頼もうか
洗剤と洗顔料とコーヒーと無くなりそうだ忘れないでね
やな季節 面倒だよね服だって窓も開けたり閉めたりしてさ
寝転ぶとボタン一つでわたしより働く音がそこかしこから
このチャイムお稽古ごとをしてたから子どもの頃は聴かなかったな
ずいぶんとと遠くへ来たねきみもまた 次の電車は二時間後だよ

ペンギンにステゴサウルス、フラミンゴ きみがいないベッドは賑やか
散歩中目を離したら花びらを食べようとして慌てて止めた
椅子の下布団の上かソファの背か それか日向で寝てるだろうな
遅くても無くならないよきみのだよ もっとゆっくり食べなと笑う
人間の動かし方を知っている はいはいドアね今開けるから
きみはもう忘れてるかもしれないけどと カメラロールを眺めてる夜
寝ていても呼んだらいつも飛び起きた 今でも起きてくれるだろうか

レモネードまた頼んだのここの店酸っぱくて前残さなかった?
描いてたねあの絵好きだよ覚えてる ココア片手に見せてくれたよ
「たこ焼きを焼くからおいで たこよりもソーセージのがメインだけどね」
写真がさ追加されててアルバムに 見たよおめでと袴似合うね
休憩にたまに廊下で話してたあの子いま何してるんだろう
机でも絵の真前も廊下でもどこでも寝たしどこでも描いた
焼き鳥屋よく行ってたね近くてさ どこにでもある味だったけど

髪型をころころ変えるひとだから待ち合わせには苦労している
「またあとで」軽い調子で手を振った まるで明日も会えるみたいに
いつ見ても変わんないよねそうやってストロー噛んだりする癖とかさ
何言おう何訊こうかと考えてそれで会ったら忘れちゃったや
同じ夢見れたらいいねそう言って隣の座席倒した遠出
それパピコカフェオレ味にしときなよ ホワイトソーダわたし買うから
何しようどれがいいかと言い合って別に何にもしないのだけど
音楽も味覚もそんな合わんのに気にならんのはすごいよなこれ
すこしだけ動画見ててもいいからさ隣にいてよそんな気分だ
今日帰り寄っていかない?アイスのさクーポンあるの誕生月の

冷蔵庫中に昨夜の残り物入ってるから後で食べてね
「寝るんなら電気消しなよ」廊下から聞こえる声に生返事だけ
飲んでから思い出したのこうやって顔を合わせていたような時間
オレンジにしてと呼んでた豆電球 消す癖はいつついたんだっけ
少しずつ薄れていった影の色そのうち馴染み夜と混ざった
なくしたら探せばいいし新しく作ってもいいそれだけなのに
わたあめが急に食べたいあれがいい、お祭りによく並ぶ屋台の
許したくなかったんです本当は傷つく顔が見たくなかった

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